雇用延長終了後も細々と働き、妻が一家の大黒柱に

中本さんは今年の11月で定年退職を迎える。その後65歳まで雇用延長となるが、給与は大幅に減るだろう。新聞社には新卒で入社したので勤続37年。退職金はある程度支給されるはずなので、それを原資としてさらなる投資やNISAなども始める予定だ。

「厚生年金も70歳まで支給年齢を上げたほうが月々多く支払われますが、私は65歳でもらうつもり。雇用延長が終わった後も細々と働き続けて、投資型貯金を切り崩せば、なんとかなるのではないかと楽観的に考えています。いま私がメディアに積極的に出ているのも、将来的に晩婚カップルの出産や育児について講演するなど、何か社会に貢献できたらいいと思っているので、その布石になればと。結果的にそれがお金になるか否かはわかりませんが」

一方、映像系の専門学校の講師として働く淳子さんはまだ40代なので、定年後の中本さんに代わって一家の大黒柱になることも考えているそうだ。

「外食を減らしてなるべく自炊にして、電気料金を東京ガスの『ガス・電気セット割』に切り替え、暖房などは極力電気よりガスを使うといった小さい節約を始めました。また、私は現在週4回の勤務ですが、そのうち夫が今より早く帰ることができるようになったら、夜間の受け持ち授業を増やしたり、副業として映像系のテクニカルライターも始めたりしようかと思っています。もともと子供が生まれなくてもそうしようと考えていたので、想定内です」と語る淳子さんが頼もしい。

ミルクをあげる産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)
写真提供=中本裕己
ミルクをあげる産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)

ハイソな文京区から優しいヤンキーがいる足立区へ

家賃という固定費も月々の家計を圧迫する。

家族が住む家として持ち家と賃貸のどちらが得かと考えると、どちらも一長一短。中本夫妻は、ずっと賃貸暮らしで、この先も賃貸物件で暮らすことを予定している。

そこで住む場所も変えた。引っ越す前は働くにも遊ぶにも便利のいい都内文京区に住んでいたが、家賃が高い。そこで家賃が低い割に居住空間が広い物件が多い足立区に引っ越したのだ。

文京区と足立区では、それぞれの区に対するイメージに大きな差がある。

文京区は東京大学本郷キャンパスを筆頭に大学が多く、私立女子校の一番手・桜蔭学園などの進学校も多い“文教地区”。場所にもよるが、住宅街は昔からの地主が住むハイソな地区もある。実際に比較的裕福な区なので、出産のお祝いはミキハウスのタオルやベビーシッターの割引チケットだったそうだ。

それに比べると足立区は、かつては犯罪発生率が高く、半グレやヤンキーの若者が多いイメージがあった。しかし、それはもはや昭和・平成のイメージかもしれない。区内の北千住は住みたい街にランクインし、東京電機大学や東京藝大などの有名大学、東京女子医大医療センターの誘致に成功した影響もあり、現在の足立区はなかなか悪くない。そう中本さんは思っている。

「子供の教育上、文京区はいいと思いますが、そこで受験に競り勝つだけの財力がありません。文京区と対極にあるような足立区ですが、思ったよりも治安はいい。確かにヤンキー風の若者もいますが、そのいかつい外見とは裏腹に(笑)、ベビーカーを押している我々を優先して道路を渡らせてくれて意外に優しい。公園が広くてきちんと整備されているし、道路にも段差がなくてバリアフリーが進んでいます。だから子育てがしやすく、子育て世帯が多いようです。今の女性区長が非常に頑張っていて、少子化対策がけっこう進んでいます」