取材より育児が大事とはけしからんと思っていた時期も

このように親にならないとできないこと、わからないことがたくさんあった。

「子供を持つ前の私は、若手記者が明日大事な取材があるのに、子供が熱を出して早く帰りたいといったら、表面的には『どうぞ』と許可していました。ですが、内心は取材よりそっちを優先するんだ? と少し憤っていました。でも今は違う。取材より子供の方が大事だと思ってしまうのですから、人間の価値観は変わるものです」

3ないのうち“時間がない”というのは、見方を変えればそうでもないということ。高齢の父は子供と触れ合う時間が、若い世代の父親より圧倒的に多いので、母親並みの育児ができる。結果的に高齢出産もデメリットばかりでないと思える。

カシオのキーボードで息子と連弾する産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)
写真提供=中本裕己
カシオのキーボードで息子と連弾する産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)

それでも、子供が欲しいのであれば、やはり少しでも若い方がいいと中本さんは言う。しかし夫婦によっては不妊問題があるし、若い時期は経済的にもキャリア的にも子供を持てないなど、子作りできない事情はさまざま。前述の保育園問題はもちろん、さらなる妊活サポートや育児サポートも異次元級にすべきだろう。

万一父親がいなくってもなんとかなると思える強い心

しかし、前述したように子供が成人する頃、中本さんは76歳という事実は変わらない。少しでも健康で長生きしないといけないというプレッシャーはしんどいのではないか。

「でも、それほどプレッシャーでもないのです。私の父が52歳で早世していて、その後、母子家庭で苦労しましたが、『父親がいなくてもなんとか生きていける』って自信があって。だって“健康で長生き”をあまり自分に課すとストレスになって心身に悪い影響があっては、元も子もないですよ。私が仮に早く死んだとしても、それにも負けないメンタルが強い子に育てた方が前向きでしょう。自分には喘息や痛風などの既往症があるので、息子がヤングケアラーにならないよう、健康に十分気をつけますけれどね」

未来を憂うより、育児を、子供のかわいさを、そして3人の生活を楽しんだ方がいいと、夫妻ともに“今”を大事にしている。