妻が45歳で出産した夕刊紙編集長(59)は現在、3歳のひとり息子の子育てに奮闘中だ。定年まであと4カ月、残された時間・お金・体力がない“3ない子育て”は忙しくも楽しいが、息子を自分の介護や世話をするヤングケアラーにさせるリスクがある。どのように乗り切るつもりか。フリーライターの東野りかさんが取材した――。
産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)
撮影=東野りか
産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)

幼い子に自分の介護や世話をさせるつもり?

「子供がヤングケアラーになったらどうする気なの?」

産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)は3年前、長男を授かった。還暦を前にして初めての子供の誕生というおめでたい話だが、周囲からは、幼い子に自分の介護や世話をさせるつもりなのか、といった手厳しい内容のコメントも寄せられた。

中本さん56歳、妻の淳子さん45歳での自然妊娠。高齢出産に加え、出産までには険しい道のりがあった。淳子さんが妊娠後期でおたふく風邪から重篤な心筋炎にかかり、文字通り死線をさまよった。

帝王切開で無事出産できたものの、長男は28週でこの世に送り出された。体重はわずか1203グラムで通常の赤ちゃんの半分以下。低体重の早産児ゆえ、「この先どんな障害に見舞われるかわからない」と医者に宣告された。父親も定年退職まであとわずか。仕事がなくなった後の教育費など問題が山積していた。

これらの顚末てんまつをまとめて中本さん自ら上梓した『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました』(ワニ・プラス)が、ネットニュースや紙媒体で数多く取り上げられた。ネットのコメント欄に寄せられた投稿の多くは好意的だったが、冒頭のような言葉に中本さん夫婦はショックを少なからず受ける。半面「そりゃそうだよなあ……と自分でも思いましたよ」と、中本さん自身も振り返る。

「だって長男が20歳になる時、私は76歳の後期高齢者です。著書の帯に書かれた『残された時間がない』『将来のお金がない』『若い頃の体力がない』という“3ない子育て”では、息子がヤングケアラーになる可能性もあるわけです」(中本さん)

だが、そんなリスクを語りつつも中本さんにそれほどの悲壮感はない。どうやって、この“3ない問題”を乗り越えるつもりなのか。