「つながり」のための予算を確保しよう
まとめれば、これからのコーポレート・ユニバーシティは日本人の「社会開拓力」の無さを前提として、組織として社会関係資本という学びのリソースを後押しする仕組みです。
そうした集合研修や集合型のイベントには、懇親会や集会、レクリエーションなどのその後のインフォーマルな集まりに対しても工夫が必要です。社会開拓力が無い日本人は自発的に声をかけることが少ないので、ネットワークづくりの機会を誰かが用意する必要があります。懇親会場を手配する、軽食を用意する、その集まり含めて予算化しておくなどの工夫が無いと、せっかくの集合的なイベントも、散発的なつながりしか期待できません。
人とのつながりの中で学ぶのが日本人に向いている
こうしたコミュニティ化の支援は、行政も後押しすることができるでしょう。とくにリソースの少ない中小企業にとっては、競合関係のない他社との共同でコーポレート・ユニバーシティのような学びの機会を創出することもできるでしょうし、地元の仲の良い企業同士で、一般的なスキルなどについての合同研修を開催するなどからスタートすれば、それほど難度が高いものでもありません。
さて、今回は「一部の社員しか学ばない」というリスキリングにとっての重い課題について考えてきました。この問題に直面した人事や経営の多くは、「個」のやる気を刺激しようと頭を悩ませます。しかし、「個」に対するカンフル剤のような施策だけでは、ほとんどの人は継続的に学ぶことはないでしょう。「稼げる資格」「これから必要なスキル」などの情報を個人が得ても、学びが続かないのと同じです。
そうした個に閉じた「ろうそく型」のような動機づけよりも、他者と関わるハコの中で、刺激を受け合って学んでいく「炭火型」の動機づけが、日本人の学びの「火」をつけるには向いている。筆者はそう確信しています。