目指すべき方向が全体で共有されているか

そうならないためにも、一人ひとりがどう活躍していくのか、組織や社会とも折り合いをつけながら、自分個人のやり方、生き方を貫いていても居心地の悪さを感じなくて済む、というような個人と組織がポジティブに共鳴していく環境が必要です。自らが納得しているからこそ実現できる組織的な行動変容が、これまでとは異なったビジネスパフォーマンスを叩き出していく。

リッジラインズが掲げている「人起点」というのは、各企業や組織が持っているパーパスやその競争力を高めるために、目指すべき方向としての「戦略」を皆がしっかりと共有していて、各自が現実的に何をどう変えなければならないかを話し合っている状態に導くアプローチです。

DXというと多くの企業では「デジタルテクノロジーを使って新しいビジネスモデルを打ち出したい」という意見が出てきます。しかし、これは簡単なことではありません。

先ほど時田さんも「12万人のパワーを本当に使いきれているのか」と、当初の命題について話されましたが、同じように考えている企業はとても多いと思います。その組織が本来持っている潜在的なパワーをフルに引き出せないケースが、実は多いと見ています。

やはり最後は「人」がどう動くか

また、デジタルとテクノロジーで何ができるかを多くの企業が考えるときに、多くの場合はユーザーエクスペリエンス(UX)を高めよう、ユーザーインターフェース(UI)を使いやすくしよう、サプライチェーンの中間在庫を最適化しよう、という話が出てきます。

しかし、やはり最後は「人間がどう動くか」が重要になります。人が本気になって「これを何とかしなければ」と真剣にならないと、UI/UXなんて絶対うまくいかないし、サプライチェーンも本気で変えようとする人がいなくて「この程度でいいや」などと思ったら、最適化なんて実現できません。

やはり組織全体を捉えて、EX(エンプロイー・エクスペリエンス)がある一定の水準に達してこそ、初めてCX(カスタマー・エクスペリエンス)やOX(オペレーショナル・エクセレンス)が実現するし、それらがうまく回れば皆のボーナスが増えるはずです。そうした“連立方程式”をきちんと解けるようにするのがMX(マネジメント・エクセレンス)です。

経営状態を可視化して、経営トップがパーパスを語り、方向性を示して、従業員と一体となって成果を上げていく。これは相互に整合性を持って語られるべきで、どこか一部が変わったとしても組織としての結果には結びつかないことがほとんどです。