富士通ではグループの全社員約12万人が入る「日本企業最大規模」の社内SNSを運用している。その狙いはどこにあるのか。富士通の時田隆仁社長と、富士通グループのDX支援会社・Ridgelinezの今井俊哉社長の対談をお届けする――。(第3回)

※本稿は、Ridgelinez編、田中道昭監修『HUMAN ∞ TRANSFORMATION』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

時田氏と今井氏
写真提供=Ridgelinez
時田隆仁氏(左)と今井俊哉氏(右)

「従業員12万人の力を使い切れているだろうか」

【時田隆仁・富士通社長(以下、時田)】2019年6月に富士通の社長に就任することになったとき、最初に何を考えたかというと、「富士通とは一体、どういう会社なのか」ということでした。

改めて考えるに、世界180カ国・地域で事業を展開しているのでグローバル企業であることは間違いない。富士通グループ全体では世界に約12万人の従業員がいるのですが、社長になる以前にその12万人もいると認識していたかというと、必ずしもそうとはいえなかったのです。

自分自身は金融のお客様を担当する金融システム本部に長く所属していたシステムエンジニア(SE)として、部門内の数千人や、関連するグループ会社の従業員を入れても数万人という規模のイメージしかありませんでした。視野の狭さを実感せざるを得なかった、というのが実情でした。

富士通がお客様にソリューションサービスを提供すると考えたとき、「この12万人という従業員の力を、本当に存分に使い切って仕事ができているか」を自問し、社長としてまずは人事制度、人材登用の仕組みに手をつけようと思っていたのです。それが就任した19年の課題でもありました。

「いいものを、安く売る」従来のマインドは通用しない

富士通は製造業から始まった伝統的な企業ですから、ご多分にもれず「良いものをつくれば売れる」というプロダクトアウトの思考が埋め込まれているわけです。より良いものをつくろうとして、ともすればものすごく機能が豊富なものをたくさんつくろうとする。

そうなると、もちろん高くなるはずなのですが、それを今度は「お客様のためにできるだけ安く売る」というのが富士通のビジネスモデルでした。

多くの日本の製造業にもこれは当てはまるでしょうし、「それこそが日本の良さだ」といわれてきた時代もあったように思います。

しかし、ハードウェアのビジネスが中心の時代からソフトウェアやサービスへ重心が移っていった中でも、そのマインドは変わらなかったのです。

過去30年で富士通ではシステムインテグレーション(SI)事業がハードウェア事業よりも大きくなりましたが、日本型SIビジネスの特徴は「お客様の要件を聞いて、それを忠実に実装すること」でしたから、その過程で自ら何かを考えて提案するという行動がほとんどありませんでした。