2022年に創業25周年を迎えた楽天グループ。最大のターニングポイントについて、三木谷浩史CEOは「社内公用語の英語化」を挙げる。なぜそこまで英語化にこだわっているのか。『突き抜けろ 三木谷浩史と楽天、25年の軌跡』(幻冬舎)から、一部を紹介しよう――(聞き手・構成=上阪徹)。
ハーバード・ビジネス・スクールのセダール・ニーリーは、英語と日本語で書かれた書籍『英語が楽天を変えた』を出版するにあたり、2018年10月24日、東京の楽天本社で楽天社長の三木谷浩史を含む楽天幹部に講義を行った。
写真=つのだよしお/アフロ
ハーバード・ビジネス・スクールのセダール・ニーリーは、英語と日本語で書かれた書籍『英語が楽天を変えた』を出版するにあたり、2018年10月24日、東京の楽天本社で楽天社長の三木谷浩史を含む楽天幹部に講義を行った。

「英語化で社員の大半は辞める」と叩かれた

――楽天グループは2022年に創立25周年を迎えました。振り返ってみて、最大のターニングポイントは何だったとお考えですか?

【三木谷】社内公用語の英語化、というのは大きかったですね。言葉ってパソコンのOSのようなものじゃないですか。それを変えるわけですから大変でした。でも、実現したことによって、日本人だろうが、インド人だろうが、アメリカ人だろうが、中国人だろうが、まったく関係ないという日本で初めての会社になれた。10年計画でしたけどね。

今や、すべての会社はIT会社なんですよ。銀行にしろ、製薬会社にしろ、出版社にしろ。その意味においては、最も重要なアセットはサービスを実現するプログラムなんです。プログラムを作る人がいないと始まらないんです。

そのプログラムを誰に作ってもらうのかを考えたとき、ものすごく狭い日本のエンジニアのプールから選ぶのと、世界に数千万人といるエンジニアのプールから選ぶのと、どっちから選ぶんですか、ということなんです。

それは、世界中のサッカー選手の世界選抜対日本選抜という話なんです。だから、僕は世界選抜を作るんだと考え方を変えた。日本語でやっていると世界選抜はできないからです。これでは絶対に勝てないでしょう。

もちろんリスクはあった。英語化で社員の大半は辞めるとメディアには叩かれました。

でも、ほとんど辞めなかった。逆にいえば、こんなことで辞める人間は、これからの時代、戦力にはなりません。

一方で、ポジティブなサプライズもありました。役員や役職者など、中高年たちが頑張ったことです。若い者には負けない、と早朝からやってきて英語を勉強していた。今や流暢な英語をしゃべっていますからね。

社内公用語英語化がなければ、今の楽天グループには間違いなくなっていません。でも、残念ながら後に続く日本の会社はなかった。これには「あれ?」と思うしかありません。みんな、ついてくるんじゃないかと思いましたからね。