将来部長や役員になりたいのであれば、他部門の経験をした方がいいのだろうか。パーソル総合研究所、上席主任研究員の藤井薫さんは「課長は専門分野の実務能力に長けたマネージャーが求められるため、同じ部署内の昇進が可能だが、部長は課長の延長線上ではない。部長や役員を目指すのであれば、若いうちから異動を厭わないほうがいい」という――。(第5回/全5回)

※本稿は、藤井薫『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

黒板に旗と山を描くビジネスマン
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「ライン課長」から「担当課長」は左遷なのか

Q:直属上司のA課長が別の事業部に異動になりました。A課長は、着実な仕事ぶりで定評がある人ですが、異動先ではライン課長ではなく担当課長(部下なしの専門職)になるようです。課長は左遷されたのでしょうか? A課長は40代半ばで、まだ役職定年などではありません。A課長の後任は、35歳のBさんです。かなり早い昇進です。(30代前半)

A:左遷を『広辞苑』で引くと、「高い官職から低い官職におとすこと。また、官位を低くして遠地に赴任させること。左降」とありますが、一般に、人事部が左遷という言葉を使うことはありません。降職とか降格と言います。役職から外す場合は解任です。

担当課長が組織図上、部長傘下ではなく課長の傘下に入ることになっていたり、等級制度上で課長よりも下位であると定められていたりするのであれば、降職・降格です。しかし、ライン管理職から部下なしの専門職になるだけでしたら、必ずしもそうとは言えません。昇進昇格ではないでしょうが、同格での役割変更かもしれません。

さて、「担当課長」の位置付けは、会社によってさまざまです。公式組織のライン長ではなくても、プロジェクトや特命担当の責任者としてライン課長に匹敵する、もしくは、それ以上の権限を持っている場合もあります。ちなみに、プロジェクトと常設組織との違いは、期間が定まっているか否かです。プロジェクトは目的を達成すれば解散します。難易軽重という意味では一概にどちらが上ということではありません。

真逆の場合では、担当課長は単なる対外呼称、名刺肩書きにすぎないこともあります。何の肩書きもない名刺は軽く見られる、対外的には「長」が付く名刺はメリットがある、社員のモチベーションも上がるしコストもかからないということで、肩書きを多用する会社もあります。中には、課長・部長などは名刺肩書きで、ライン管理職の名称はマネージャーやジェネラルマネージャーなどのカタカナを使うという会社もあります。