共通点がどうしても見つからなかった場合の質問

この話はここで終わりません。おそらくメンバーの話をいくら聞いても、共通集合が見つからない、接点が見つからないことがあるはず。いや、そういうことのほうが多いかもしれません。

そんな時は、もう1つの質問をしてみましょう。

「今回のあなたの主張に直接関係ないかも知れないけど、面白い、記憶に残る『観察事実』や考え方(『思考回路』)があったら聞かせてもらえないかな?」

そう、この質問により、メンバーにも、いまの小さな円の外延を広げて二重円にしてもらうようにお願いするわけです(図表5)。

この時に、共通集合を見つけて「あっ、いまの『観察事実』は面白いね」「その『思考回路』はいいね。なるほど」などと反応することで、メンバーの円はさらに広がっていきます。

あなたにもこういう経験はないでしょうか。自分とは立場がまったく違う人、たとえば別の会社の幹部などと話をしている際、あなたがあまり重要でないと思っていた観察事実や思考回路に、相手が「それは新しい発見だ」「それは面白い」と反応するという経験です。

ある人とある人の興味の範囲が、いつでも100%、同じであるわけがないのです。その違う考え方を自分の中に貪欲に取り込める人こそが、イノベーションを起こすことができます。

そのためには、こちらが柔軟に相手の「観察事実」や「思考回路」を受け入れる姿勢を持つことです。

マネジャーに勉強が必要な、本当の理由

このような仕事のやり方を私は「ベン図法」と名づけています。この方法論を意識的に確立して以降、チームメンバーとのミーティングが楽しくなりました。同時に、誰からでも学べることを改めて認識しました。

そして、効率的に、かつ高い品質で成果が上げられるようになったのです。おまけに共同作業を行うことでメンバーの巻き込みも図ることができ、チームの一体感も強くなりました。

いま思えば、これはまさにフラット型組織を作るために最適な方法論だったわけです。自分だけで考えるのではなく、異質と異質を組み合わせ、結合させる。

だからこそ新しいものが生まれ、チームの巻き込みで成果も上がる。メンバーと仕事をしていても、考え方が違うほうが面白くなってきました。

山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)

そのためには、自分の周辺円をどこまで広げられるかが鍵になります。自分の周辺円を広げない限り、メンバーの円、周辺円の考え方との接点は出てこないからです。

だから、マネジャーになったら、意識して自分の観察事実や思考回路を広げるための積極的学習が必要になります。

他人が経験したことに耳を傾けたり、外部の専門家に話を聞いたり、経営学の勉強をしたり、経営学以外のリベラルアーツ系の本を読んだり、街中をふらついて消費者を観察したりといった、学習を通じた自分の関心領域の拡大が、ベン図法を成功裏に実行する鍵になるのです。

これらは、「ベン図法」を使うようになってから、私が意識的に行うようになったことです。

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