管理職の仕事とはなにか。立命館大学ビジネススクールの山本真司・専任教授は「リーダーとしてマネジャーがやるべきことは、メンバーのプライドを守ることだ。特に『年上のメンバー』のマネジメントをしなければならない時に、その実力が問われる」という――。

※本稿は、山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

マネジャーが守るのは自分のプライドではない

「チームメンバーを好きになろう」という気持ちを妨げるのが、自分の「プライド」です。「負けたくない」「偉いと思われたい」「バカにされたくない」というプライドが悪い方向に働くと、メンバーを人前で叱責しっせきして留飲を下げたり、会うたびに嫌味を言ったりという行動がついつい、出てきてしまうものです。

本来、リーダーとしてマネジャーが守るのは自分のプライドではなく、メンバーのプライドです。そうです、「自分はメンバーのプライドの警備員なんだ」というくらいの思いを持ってメンバーに接することが重要です。

メンバーを人前で叱ったり、弱みや失敗を責めたりするのは絶対にNGです。伝えたいことがあるなら、誰もいない時に、別室などで改めて伝えるべきです。嫌味は絶対に言わない、メンバー同士を比較するような発言をしない、なども重要です。

メンバーのプライドをどうしたら守ることができるのかを常に考えることも、マネジャーの仕事だと思ったほうが良いでしょう。彼らが顧客に責められていたら、自分事ととらえて即座にそのフォローをすべきですし、メンバーの悪口を誰かが言っているのを耳にしたらそれとなく注意すべきです。一緒になって悪口を言うようなマネジャーは論外です。

「罵倒された」ということしか頭に残らない

なぜ、メンバーのプライドをそんなに大事にするのか。それは、私自身の過去の体験がベースにあります。

私もいろいろな上司の下で仕事をしましたが、いまでもそのアドバイスを鮮明に覚えており、その指導に感謝している上司が何人かいます。そういう上司の共通点は、私のプライドに最大限配慮してくれていたことです。人前で叱ったり、弱点を指摘したり、悪口を言ったり、嫌らしいからかいの言葉を発したりは一切しない、そんな上司たちでした。

私が最も影響を受けた上司は、私がダメな仕事をすると、途端に顔が怖くなったのですぐにわかりました。しかし、決して人前で私のダメな仕事ぶりを罵倒したり、私の弱点をこれ見よがしに口にすることはありませんでした。その代わり、ミーティング後に個室でみっちりしぼられました。

プライドに配慮してくれるマネジャーの下では、しぼられている時に「自分のプライドを守ろう」などと余計なことに頭を使わなくてすみます。だから、素直に反省し、改善策を考えられるのです。自分がいかに甘かったかに気づき、部屋を出た瞬間に走って自分の席に戻り、猛烈に仕事を始めたこともありました。

一方、人前で平気で罵倒するような上司もいました。いま思えば、彼らが言っていたことも、実は示唆に富むものだったとは思います。ただ、その言葉は、なんとか思い出そうとすれば思い出せるかもしれませんが、ほとんど頭に残っていないのです。罵倒されたことしか覚えていません。

ビジネスマンが指を指す
写真=iStock.com/XiXinXing
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自分に絶対の自信がある人など、ほんの一握りだと思います。私自身もそうですが、ほとんどの人がその弱さを隠すため、大なり小なり強がって、必死にプライドを守って生きていこうとしている。そのことをマネジャーは忘れないようにしたいものです。