人間はすぐ支配されてしまう
では「価値観」が、どのようにつくられていくのかを考えてみましょう。
破壊的なカルト宗教団体では、メンバーの意思統一を図るために“マインド・コントロール”を行います。
マインド・コントロールというと、催眠にかけるようなものだと勘違いしている人が多いようですが、そうではありません。実は“情報操作”なのです。
オウム真理教の事件で知られるようになりましたが、信者と言われた人たちは教団施設で修行をし、見事なまでにマインド・コントロールされ、意思と情報が統一されていたのです。
彼らは施設内の教団員としか話せません。家族や友人が面会に来ても、一切会うことができません。そしてテレビ・ラジオ・新聞などのメディアにも、一切触れられないのです。そのうえで、教団にとって都合のいい情報だけは、どんどん与えられていくわけです。
この手法で、少なくとも2週間も経てば、教団を完全に信じ込み、1カ月経てば見事にマインド・コントロールされて、自分の意志では脱出することが不可能になります。情報が偏ることで、私たち人間の考え方や価値観、意思などは簡単に揺らいでしまうのです。
自分の価値観が正しいと思わない一緒にハッピーになる
価値観が正しいか間違っているかは、短い時間で判断できるものではありません。
今は非常識なことでも、5年経てば常識になることなんていくらでもあります。個人も人間的に成長することで、自然に価値観は変化していきます。
大切なことは「自分の価値観は正しい」と思わないことです。自分の持っている価値観や信念は、毎朝リセットして生活をスタートするのです。
たまには自分の価値観や状況を俯瞰してみてください。
自我の囚われからちょっと抜け出て、自分にメリットがなくても友人が心から楽しんでくれることは何だろうと考えてみる。
自分の立場を守ることよりも、チームにとって今必要なことは何だろうと考えてみる。
自分の意見を押し付けるよりも、家族が幸せになるために、今大切なことは何だろうと考えてみる。
このような意識から出てきた価値観や意見を他人に伝えることができれば、多くの人が納得し、協力も惜しまないでしょう。
「嫌われないように」という意識で起こす行動と、「人に喜んでもらい、自分も一緒にハッピーになりたい」という意識で起こす行動は違います。
前者は、自我に囚われることで自分を犠牲にし、他人目線で人に尽くす言動が自分自身を苦しめている状態です。
後者は、他人の表面的な言動に振り回されず、自分の意思で人が本当に喜ぶことを考えている状態なのです。
そして、後者の視点にたどりついたとき、人づきあいで疲れない自分となり、心から自分の幸せを実感できるのです。