メールやSNSに「心理的リアクタンス」は活用できる
たとえば、あなたが友人からこんなメールをもらったと想像してみてください。
A:新しいサービスをはじめました。お得な特典もあります。
B:新しいサービスをはじめました。お得な特典もあります。いますぐ登録してください!
AとBは内容的には同じですが、じつはBのほうがメールの返信率が下がることが、以前わたしが行なった調査でもわかっています。
新しいサービスをはじめたとき、受けてほしいという気もちが強いあまりに、つい「登録してください!」と言いたくなってしまいますが、このような表現は「心理的リアクタンス」が働くため、逆に登録したいと思えなくなってしまいます。
メールやSNSなどでも、人に紹介する場合はぜひ気をつけてください。
自己決定することで、ドーパミンが分泌される
わたしも以前何度も体験しましたが、社会人になると「心理的リアクタンス」の働きに悩む場面に遭遇します。強制されて、やりたくないけど、仕事だからやらなくちゃいけない……。そんなシチュエーションです。
こうした場面では、2つの選択肢をつくってどちらかを選ぶ形にすることで、状況を改善することができます。
たとえば、上司から急に残業をお願いされたとします。お願いの形にはなっているとはいえ、こちらに拒否権のない状況です。当然、「心理的リアクタンス」が働き、やる気は急降下します。
そこで、残業をしてみるという前提に立って、自分にこんな質問をしてみます。
「最低限の必要な範囲の仕事を片づける」
「上司を驚かせるくらいの作業スピードで一気に片づける」
「2つのどちらを選びたい?」
不思議なもので、どちらかを選ぶと(どちらを選んだとしても)仕事へのやる気がアップします。なぜなら、わたしたちは自己決定することで、ドーパミンが分泌されるからです。その結果、選択した行動へのやる気を高めてくれます。
つまり、「心理的リアクタンス」対策としては、自分で選択肢をつくって選ぶこと。これからとり組むことに自分なりの目的を見いだすことが役立ちます。
これは裏返すと、あなたが部下や子どもに何かを強制しなければならないときにも使えます。
単なる「○○してください!」「○○しなさい!」ではなく、そのあとに2つのなかから選択してもらいます。すると「心理的リアクタンス」の働きをやわらげることができるようになります。
※1 心理的リアクタンス Brehm, J.W.“A theory of psychological reactance”, 1966, Oxford, England: Academic Press./ Rosenberg, BD.& Siegel JT.“A 50-year review of psychological reactance theory: Do not read this article”, Motivation Science, 2018, Vol.4, p.281-300