日本の飲酒文化は女性の社会進出を妨げている

――日本では「接待」と称し、取引先と「飲み会」をする文化があります。また、上司や同僚などとのアフターファイブの飲み会が昇進や出世に有利に働くこともあります。日本の飲酒文化は、「男同士の絆」や閉鎖的な男性社会の形成を助長するという意味で、女性の出世の足を引っ張っている存在だと言えるのでしょうか。

おそらく、そう言えるだろう。日本では「飲みニケーション」と言われていると聞く。日本の男性は特にそうかもしれないが、中にはコミュニケーションが不得意な人もいるため、アルコールが必要になるという面もある。

また、日本の場合、男性がお酒を飲む場所は往々にしてジェンダー色が強い。居酒屋はそうでもないだろうが、例えば、「スナック」がそうだ。一般的に、お店でお酒を出すのは女性、飲むのは男性であり、非常に不平等な関係と言える。

日本でも、ボーイズクラブ(閉鎖的な男性社会)の存在に疑問を呈する声がいくらか出ているかもしれないが、依然として健在だ。それゆえ、企業における女性の出世に足かせがはめられてしまう。

男同士の飲み会など、ボーイズクラブの存在だけが日本女性の出世の阻害要因かどうかはわからない。だが、日本企業にはジェンダーと仕事に対する旧態依然とした姿勢が見られ、それが大きな問題をはらんでいる。

ジェンダーの点から見ると、日本は世界で最も平等度が低い国の一つだと認識している。日本の文化と飲酒をめぐる慣行が、その原因の一部であることは確かだ。

日本の飲酒文化は女性の犠牲の下に成り立っている

――アメリカでは、企業における女性管理職の割合が40%を超えているのに対し、日本企業は、調査によって数字にやや幅はありますが、約10~12%です。専業主婦の女性が子供の面倒を見てくれなければ、男性は頻繁に夜遅くまで飲めませんよね?

そうだ、構造的な問題だ。日本における男性の飲酒慣行は、妻や夫の母親などが家で子供の面倒を見ることを前提とした社会システムの上に成り立っている。そして、それは女性に、望まない選択を強いることが多い。男同士の飲み会は、こうしたシステムの中に組み込まれている。

故安倍晋三元首相も岸田文雄首相も、女性の活躍をめぐり、何らかの見解を述べているが、そうした発言は有権者受けがいい。実際のところ、どれほど本気で変革しようと思っているのかは疑問だ。

もちろん、アメリカでも、業界や場所によっては、日本の状況といくらか似ている場合もあるだろう。育児の状況は国を問わない。多くの国々で妻と夫がまったく平等に育児に関わっている、などとは思わない。

とはいえ、例えば、私の場合、このインタビューの前に子供2人を学校に迎えに行ってきた。そのせいで、インタビューに遅れるのではないかと気が気でなかった。日頃から、できる限り妻と平等に育児を分担するよう努めているが、それでもまだ足りないと、恥ずかしく思っている。

(後編へ続く)

ポール・クリステンセン(Paul Christensen)
米ローズハルマン工科大学准教授
文化人類学者。現代日本における飲酒文化やアルコール依存症からの回復、ジェンダー、特に男性性などの分野に関心がある。著書に『Japan, Alcoholism, and Masculinity: Suffering Sobriety in Tokyo』(2014年)。サンフランシスコ州立大学で修士号、ハワイ大学マノア校で文化人類学の博士号(2010年)を取得。博士論文は、日本のアルコール依存症と男らしさについて。ローズハルマン工科大学は米中西部インディアナ州にある。
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