2030年には人手不足がさらに深刻化する

実は足元の日本の人口構造について人口減少と若年層の労働人口の減少スピードが加速しています。日本が人口減少するという話はずいぶん前から言われてきたのですが、その減り方は放物線を描くため、頂点付近ではそれほど大きな変化には見えません。日本の人口減少がはじまった転換点は2008年なのですが、最初の5年、10年の減少率はそれほど大きくはありませんでした。

ところが10年目の2018年から15年目に当たる現在までの5年間でみると、人口減少は加速しています。直近の日本人人口は2018年初期から見ると211万人も減少しています。そしてその減少スピードはこれから先、さらに加速することが確実です。

今、日本の労働人口全体は、人数的には団塊ジュニアと呼ばれる世代が支えていますが、その団塊ジュニアがいよいよ50代に突入しました。2030年ごろには団塊ジュニアは還暦に差し掛かります。

いろいろと異論は出るとは思いますが、仮に45歳未満の労働人口を「若手戦力」と定義すると、2023年から2030年の間にその総人口は15%も減ることになります。つまり、人手不足に悩む企業はこれから先、今まで以上に人が採れなくなるのです。

ユニクロは労働問題のパンドラの箱を開けた

ではイオンやユニクロやオリエンタルランドのように大量の若手戦力を必要とする巨大企業はどうやって生き残ればいいのでしょうか? 答えは単純です。競争相手よりも賃金を大きく上げればいいのです。

資本主義経済下では、大企業というものは本質的にはもうかることに手を出します。賃金が安い方がもうかるなら賃金を低く抑えますし、賃金を上げた方がもうかるなら上げる。倫理では重い腰を上げない企業も、利益には敏感です。

そして重要なことは、ユニクロが真っ先に「賃上げ優位」に業界ルールを変更したことです。それにイオンとオリエンタルランドが追随したというのがここまでのニュースで、これは最低賃金という重しでふたをしてきた労働問題のパンドラの箱が開いたことを意味します。