ブラック企業の「終わりの始まり」
今回、ユニクロがパンドラの箱を開けたことで労働環境の潮目が変わります。20代前半の若い世代にとってはすでに大学全入の時代が始まっていますが、これからは企業全入の時代に突入するでしょう。いまのところは就活にあぶれて非正規労働に応募してくれる20代が存在するのが日本の実情ですが、これから先、そのような企業から見て都合のよい人材は絶滅危惧種となっていくでしょう。
頼みの綱の外国人労働者もコロナで絶対数は減少するうえに、円安の影響で賃金の高い韓国や台湾との獲得競争が激化しつつあります。賃上げ競争力のない中小企業はこの先、DXで生産性を上げるか、ないしはシルバー人材の活用でなんとか労働力を確保するか、その二択になるでしょう。賃上げができないゾンビ企業は事業継続ができなくなり市場から退出します。
結果として企業のコストが上昇しますから、価格転嫁せざるを得なくなります。サプライチェーンのさまざまな部分で価格上昇が起きて、最終的にはインフレが起きます。ただこのインフレは昨年起きたような収入増を伴わないまま電気代や小麦製品が値上がりするインフレではなく、賃金上昇を伴うという点で違います。働く家計にとっては良いインフレになるはずです。
経済というものは本質的には大きな流れには逆らえないものです。安価な労働力が継続的に確保できる時代はどうやら終わりが始まったようです。そしてそれが意味することは、ブラック企業というビジネスモデルにも終わりの始まりが告げられたということなのです。