タピオカはなぜ短期的なブームで終わってしまったのか
ここで、ブームとトレンドの違いについて少し触れてみることにします。
ブームというのは一過性の流行で、定着することなく去っていくものです。先ほどマスクの例を挙げましたが、それ以上にわかりやすいのがタピオカなのではないでしょうか。
人は「○○が流行っている」と聞くと飛びつきたくなるものです。まだ数が少なかったタピオカの店に大勢の人が押しかけました。
タピオカは原価率が低く、利幅が大きい商品です。これで一儲けしようと企んだ人たちが多数出店しました。
でも、実はそのときはもう終わりに近かったのです。案の定、多くの店ができた段階で人々は飽きてしまい、見向きもしなくなりました。
ブームが短時間のうちに過ぎ去ってしまうものであるのに対し、トレンドは長期間にわたって私たちの生活に浸透してくるものです。
多くの人の生活を根本的に変えるものは長期トレンドになる
その違いを私は「多くの人の生活を根本的に変えるかどうか」にかかっていると見ています。タピオカは嗜好品です。好きな人はブームが去っても飲みたいと思うかも知れませんが、おそらく大多数の人にとっては「なくても困らないもの」だと思うのです。
一方、私たちの生活に溶け込み、必要不可欠なものとなったのはどのようなものでしょう。まずは、昭和30年代に登場して「三種の神器」と呼ばれた冷蔵庫・洗濯機・テレビです。冷蔵庫や洗濯機のない生活は、まず考えられません。
特に、洗濯は重労働です。職業の歴史の中でも、洗濯を職業としていた女性(現代でいうクリーニング店に近い専門職種)は、一番早くに確立されたのだとか。昭和30年代に家事を担っていた専業主婦の方々にとって、洗濯労働から解放されたことの意味は、今の私たちには想像もつかないほど大きなものだったことでしょう。