アフターコロナに注目される投資テーマは何か。複眼経済塾塾長の渡部清二さんは「『ユーズド・イン・ジャパン』や『金融ハブ』で日本、とくに東京が注目を集めつつあります」という――。

※本稿は、渡部清二『会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍・100倍になる! 超優良株ベスト30』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

スーツケースを引いて空港ターミナルを歩く乗客
写真=iStock.com/izusek
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リーバイスはなぜメード・イン・ジャパンを打ち出したのか

2000年以降、中国が「世界の工場」と呼ばれるようになり、多くのものが作られるようになりました。やがて、中国の人件費が上がると生産拠点は東南アジアに移っていき、先進国では製造業の空洞化が起こりました。

しかし私は近年、日本の製造業が見直され高い付加価値を持つようになっているのを感じ、その傾向はますます強まっていくのではないかと思っています。

私が最初にそれを意識するようになったのは、『四季報2015年春号』を読んだときのことです。当時、東京JQS(ジャスダック)に上場していたリーバイ・ストラウスジャパンのコメントに「メード・イン・ジャパンを打ち出し需要喚起」とあったのです。

どうしてアメリカのリーバイスがメード・イン・ジャパンを打ち出すのか? 謎でした。

同時に中国企業に買収されたレナウンのコメントにもまた「メード・イン・ジャパンを打ち出した新商品」を売り物にする、という趣旨のことが書かれていました。

中国より日本で製造したほうがトータルコストは安い

つまり外国企業が日本産にこだわっているということだったのですが、他にも同じような事例があるのかを調べたところ、『プレジデント』(プレジデント社刊)という雑誌に、日本ヒューレット・パッカードが、中国の工場を閉鎖してわざわざ東京に工場を移したという記事を見つけたのです。当時は、日本の工場を閉めて中国に移すのが主流だったのに、逆をやっていたわけです。

どうしてだろうと思い、その記事をじっくり読んだところ、結果としてトータルコストは日本で作ったほうが安いというのが理由とのことでした。

そのトータルコストとは何かというと、1つは「納期の早さ」であり、もう1つは「カスタムメードの対応力」なのだとか。カスタムメードは1700万通りあるらしいのですが、これは日本語でコミュニケーションの取れる日本工場でしか対応できないことがわかったということでした。

これらも含めた価値がトータルコストであり、それらをすべて勘案すると日本で作ったほうが安いという結論に達したそうです。これもまさに、「人的資本」に関連するエピソードと言えるでしょう。