なぜハンバーグは1種類しかないのか

端的に言えば、食材の調達にしても食品加工にしても、自前でできることは極力自前で行い、企業と組む場合でも徹底的にコストを下げる工夫をするというのがサイゼリヤです。

コストの削減は、闇雲に提携企業に値下げを求めるのではなく、無駄を省く努力をして実現させます。どこにどんなコストが生じているのかを提携企業に聞き、自前でできることは自前でやることで提携企業の労力を減らしてコストを削減しているのです。

サイゼリヤのメニューの品数は、ほかのレストランチェーンと比べて非常に少ないのが特徴です。ステーキやハンバーグにかぎってみても、ステーキはリブロースステーキだけ、ハンバーグは5種類ありますが、ソースや副菜が違うだけでハンバーグ自体は1種類です。

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このように、サイゼリヤのメニューの数が少ないのはイタリア料理に特化しているからという理由もありますが、コスト削減によるものです。

ステーキはリブロースだけですが、そうすることによってスケールメリットが生まれ、仕入れ価格を抑えることができます。さらに、カットするときに生じる大量のロスも、それをハンバーグに使用することで、ハンバーグの品質を一定に保ちつつロスを減らすことができます。

製造直販のビジネスモデルを築き上げるきっかけとなったのは、いまではサイゼリヤの看板商品となっている「ミラノ風ドリア」の値下げでした。ミラノ風ドリアはミートソースのドリアですが、当初480円だった価格を1999年に290円に大幅値下げしたところ売り上げが3倍になりました。

しかし、品質を維持するため生乳を使いつつコストを削減することが課題として浮上しました。その課題解決のために取り組んだのが、製造直販というビジネスモデルを構築して流通のしくみを変革することだったのです。

実はイタリア料理を食べたことがなかった

正垣さんが「サイゼリヤ」を開業したのは、大学在学中の1967年のことです。最初はフルーツパーラーでした。最近は高野や千疋屋などの高級店しかありませんが、当時は、街角にフルーツパフェやフルーツサンドイッチなどを出す喫茶店は多く、人気がありました。

開業当初は経営者のつもりでしたが、お客が全然入らず従業員にまともな給料も払えない状況で、正垣さんも店に入ることになります。

開業して間もなく、火事で店が全焼するなどのご苦労を経て、再建された店舗でイタリアンレストランとして再出発します。1968年のことです。

イタリアンにしたのは、オリーブオイルやトマト、チーズなどイタリア料理で使う食材が健康によいという理由で流行していたからです。

日本の話ではありません。世界の話です。当時、イタリア料理は日本ではほとんど知られていませんでしたし、正垣さん自身も「きちんとしたイタリア料理を食べたことがなかった」そうです。