DaiGoさん炎上事件で広がった議論

【宮内】DaiGoさんは何をして炎上したのですか。

【井上】ネット動画の中で「ホームレスや生活保護を受けている人の命はどうでもいい。自分は猫が好きで、猫の命のほうが大事だ」といった趣旨の発言をしたんです。これがネット上で猛反発を受けて、一斉に反論の声が上がり、テレビのバラエティ番組でも紹介されたぐらいです。

彼の発言をきっかけに「自己責任論をどう考えるか」「貧しい人をどう考えるか」という議論がネット上で沸騰しました。私は日本では自己責任論が強いので、DaiGoさんに賛同する人も多いのではないかと思っていたのですが、ネットの中では反発一色でしたね。

【宮内】私は自助、共助、公助、どれも必要で、全部大切だと思います。「ホームレスや生活保護を受けている人はどうなってもよくて、猫より下だ。放っておけ」というのは、根本的に間違っていますよ。

撮影=小林久井
オリックス シニア・チェアマン 宮内義彦さん

自分の成功を「運がよかったから」と考えられるか

【宮内】先ごろ『ハーバード白熱教室』で有名なマイケル・サンデル教授の『実力も運のうち 能力主義は正義か?(※注2)という本を読みました。非常に面白かった。エリートが自らの成功を能力と努力の結果とだけとらえ、それが良い家庭環境によってもたらされていると思い至らないことへの問題点を鋭く指摘している本です。

基本的にアメリカについて書いているわけですが、サンデルさんは中でも教育に大きなポイントを置いています。アメリカの場合「大学教育を受けられるか受けられないか」がクリティカルポイント(決定的な分かれ目)で、それには個人の能力というより親次第という面がある。「親のおかげで大学に行った人が、それなりにがんばってお金持ちになったからと言って、偉そうなことを言うのはおかしい」という論理です。

まさにそのとおりで、社会的に成功したからといって“自分が偉かったからだ”と威張る人は愚かだなと思うんです。“自分は運がよかった”と考えられれば、“運が悪かった人を助けよう”と思えるのは、人として自然なことでしょう。

ただ、告白してしまうと、私も猛烈に働いていた若い頃には“公助”が嫌いだったんです。しかし「世の中を広く見渡してよく考えてみると、やはり必要だ」と今では思うようになりました。人生には自分の努力だけではどうにもならないこともありますし、運の悪い人はいるわけですから。