ひたむきで勤勉な人ほど「思考停止」に陥りやすい
ところが多くの場合、そのような可能性を考えることなく、会社(上司)からの「アンケート調査をやる」という指示を「定型的にさばけば済む仕事」と捉え、自動的に「どうやるか」に入ってしまうのが、ひたむきな勤勉さを持った日本人です。そのような目的や意味を考えずに、たださばこうとする態度・姿勢のことを、私は「思考停止」と言っているのです。
本来であれば、新しく仕事を始めるときには、「この仕事は定型的にさばいてもよい仕事なのか」、それとも「目的やそれがもたらす意味などをしっかりと考えることを必要とする仕事なのか」という判断がまず必要なのです。
しかし、ほとんどの場合、そうした判断はスルーされ、“さばく仕事”としてすべて処理されていくのが現状です。
多くの日本人は、何事をするときでも無意識のうちに置いている何らかの規範、たとえば「前例はこうだった」といった前提を置いてものごとを処理しがちです。
今回のケースのように上司から「アンケート調査をやりなさい」という指示があったとき、「アンケートをする」ということが無意識のうちに「問い返してはならない前提」となりがちで、多くの場合、それを前提条件として定型業務をさばくという行動はスタートするのです。
前提の“枠”の範囲で処理するのは効率的だが…
「定型業務であるべきか、そうでないのか」を考え、定型業務であるという判断をした後にそうするなら、思考停止ではないのですが、考えることも判断もまったくしていないところに問題が潜んでいる、ということです。
本当に意味のあるアンケート調査をしようと思うならば、まず、「そもそも何のためにこの調査をするのか」「会社や調査対象になっている人たちにとってどういう意味があるのか」などといった、アンケートをすることの意味を最初に考える必要が本来はあるはずです。
にもかかわらず、目的などのテーマは前提にかかわってくる話なので、とりあえず簡単にまとめておいて、後は「どういう日程で、誰を対象に、どのような質問項目で」といったことをさばき始めるのが一般的です。
「何のためにやるのか」といった青臭い議論を深く掘り下げるのは「時間の無駄」だ、と身体が覚えてしまっているのです。
私が思考停止と言っているのは、業種にもよるのですが、日本の多くの企業で行なわれているように、無自覚に“前提なるもの(枠)”を置いて、その前提の下に「どうやるか」からさばき始め、枠の範囲でものごとを処理しようという、ある意味では効率的で便利な思考姿勢のことなのです。