「レイターのセールスの仕事が一番自分に合っている」
一方、米国子会社で「優秀な人を採用したい」と思ったときは、ヘッドハンターや転職斡旋会社に依頼し、ディズニーやワーナー、ユニバーサルなどでキャリアを積んだ人を探してもらうのが自然な流れでした。
そうやって探すと、「ディズニーとワーナーで仕事をしていました」といったキャリアの持ち主がたくさんいるのです。エンターテインメント業界の知見が深く人脈もあるので、そういった人材はサンリオを成長させていくうえで、とても重宝しました。
アメリカではこのような「転職によるキャリア形成」が一般的なのですが、シリコンバレーが面白いのは、それに加えて企業のステージの変化もあることです。
たとえば、ひとくちに「スタートアップ」といっても、創業者と数人の社員でアイデアを構想しているような企業もあれば、アイデア構想を経てプロトタイプ作りやテストに進む段階の企業、顧客にプロトタイプへの評価をもらう段階から製品のリリースへと進みつつある企業、売上を立ててキャッシュフローを安定させていき、IPO(新規公開株)やM&Aも視野に入ってくる企業まで、一般には「シード(seed)」「アーリー(early)」「ミドル(middle)」「レイター(later)」と呼ばれるような、さまざまな成長段階にある企業がひしめいています。
そして、それぞれの成長ステージで必要とされるスキルや能力、専門性などには当然、違いがあります。ですから、たとえばシリコンバレーで働いている人たちの中には、大企業もスタートアップも経験したうえで「レイターのセールスの仕事が一番自分に合っている」という人もいるわけです。
「失敗も、その人の資産」とみなされる
業界・業種と職種の組み合わせだけでなく、企業の成長段階も加味されるわけですから、仕事の選択肢は非常に豊富だといえます。
シリコンバレーの人たちが転職を繰り返す中で自分の興味・関心や得手不得手を知り、知見を重ねていく様子を見ていると「キャリアとはこうやって築いていくものなのか」と痛感させられます。
ちなみに、シリコンバレーでは「失敗も、その人の資産」とみなされます。
当たり前の話ですが、「このステージで、このような失敗をした」という経験は、「同じ失敗をしないようにチェックできる」という意味で資産になるからです。失敗が怖いから転職しないというようなマインドはない、といっていいでしょう。