落書きから生まれたヒーヒーばあちゃん

快進撃を続ける「カラムーチョ」。1986年にはCMを流し始める。そこに登場したのが、以降トレードマークになる「ヒーヒーばあちゃん」というキャラクターだ。

「もとは落書きだったんですよ。クリエイティブディレクターの西橋裕三さんという人が、打ち合わせ中に暇だったからと絵コンテの隅に描いたもの。それが面白いってことで、マスコットになっちゃった。マーケティングとかそんな偉そうなもんじゃない。とにかく個性的なものに仕上げていかないと、販売力も広告力もあるカルビーさんには勝てないと思って」

「カラムーチョ」以降の湖池屋はブランド戦略を取るようになる。会社名ではなくブランド名を推すのだ。「湖池屋のポテトチップス」ではなく「カラムーチョ」という商品名を連呼する。その後の「スコーン」(87年発売)「ポリンキー」(90年発売)「ドンタコス」(94年発売)などのCMもそうだ。

画像提供=湖池屋

CMは「お金がないので」ブランド連呼型

「商品名を連呼する理由は2つ。ひとつは、とにかく商品を有名にしたいから。もうひとつは、お金がなくて有名タレントさんを使えなかったから。当時の湖池屋は広告代理店にCMをお願いする際、新人さんにやらせてあげてくれって言ってたんです。新人で、優秀な人をって。大手がやるCMは有名タレントさんを使って、きれいなイメージで仕上げるじゃないですか。うちはそうじゃなくてインパクト重視。それで出てきたのが佐藤雅彦さんでした」

佐藤雅彦、1977年電通入社。湖池屋の「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」ほか、NEC「バザールでござーる」など著名なCMを多数手掛ける。電通退社後はプレイステーション用ゲーム『I.Q インテリジェントキューブ』を企画したほか、『だんご3兄弟』の作詞・プロデュース、NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』の監修も務める才人だ。佐藤が最初に手掛けた湖池屋のCMは、「ぱりぱりのり塩、やっぱりのり塩」が連呼される「コイケヤ のり塩」である。

「初めてお会いした時から、すごく変わった人だなって。とにかく変で面白い。『ポリンキー』のCMでプレゼンしてくれたときなんて、その場で歌い始めるんですよ。それだけ才能のある方にやっていただけたのは、ひとえに運だと思います」