「焼き芋」がおいしい季節がやってきた。さつまいもの品種が多様化する中、“自然本来の甘さ”を極限まで引き出し、最高糖度78度の商品を製造・販売する宮崎県の会社が話題だ。年商はたちまち3億円超に達し、今後はNYなど海外での販路拡大予定だという。ライターの水野さちえさんがイベント「さつまいも博」も仕掛けた40歳の代表を取材した――。

焼き芋の内側が出てきた天然の“蜜”…甘さが異次元

ふつうの焼き芋は表面がカサカサだが、それは蜜でピカピカ。つまむと見かけによらず、ずっしり重い。とろりとしたたっぷりの蜜もろともがぶりと口に入れると、想像のはるか上をいく異次元の甘さにすべての人が驚いてしまう。

「自信作の“極蜜熟成やきいも”です。上にかかっているのはハチミツですか、と聞かれることが多いですが、これは焼き芋の内側が出てきた天然の“蜜”です。皮まで全て甘いですよ。砂糖、添加物、保存料は一切不使用です」

手塩にかけたさつまいもを90日かけ熟成させ、2度焼きすることで糖度を最大に引き上げる。内側に含まれる“蜜”がしみ出て、バケツにたまる。
写真提供=SAZANKA
手塩にかけたさつまいもを90日かけ熟成させ、2度焼きすることで糖度を最大に引き上げる。内側に含まれる“蜜”がしみ出て、バケツにたまる。干し芋も人気だ。

そう話すのは、宮崎市田野町でさつまいもの生産と加工を手がける、SAZANKAグループの菅生健二さん(40)。主力商品のひとつ「極蜜熟成やきいも」は1㎏で3990円。1本約300gとすると、1300円以上と決して安くはないが、飛ぶように売れるのだ。

#SAZANKAグループの菅生健二さん
撮影=水野さちえ
#SAZANKAグループの菅生健二さん

菅生さんの焼き芋事業歴は約7年。当初は地方で小さい規模で細々と始めた零細ローカルビジネスだが、今や、地元宮崎や九州だけでなく、全国区に名乗りをあげ、世界進出するなど急成長中だ。有名なユーチューバーも関わったその躍進ぶりを報告する前に、菅生さんがなぜ、焼き芋を作るようになったかを紹介しよう。