なぜ関西の食品会社は存在感を示しているのか。日本総合研究所 調査部長でチーフエコノミストの石川智久さんは「大阪ルーツの会社によって、地球上に住む全員が1人13食以上食べたとされる食品が開発されている。後にこの食品は、かつて米国の刑務所で盛んに取引されていた『たばこ』に代わって取引されるようになった。関西が世界を変えた象徴といえる」という――。

※本稿は、石川智久『大阪 人づくりの逆襲』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

「子どもたちの仕事は食べることと、遊ぶこと」グリコの精神

大阪といえば「食い倒れ」を背景に食品関係の会社もたくさんあります。「京都の着倒れ、大阪の食い倒れ」と古くからいわれていますが、京都は着物に、大阪は飲み食いに、贅沢をして財産を失うという意味です。いっぱい食べて体が倒れるのではなく、食べ物にお金を惜しまないという意味です。

食品関係で有名なのは、江崎グリコ、ハウス食品です。江崎グリコ創業者の江崎利一えざきりいちは、それまで捨てられていた牡蠣の煮汁に栄養素のグリコーゲンが大量に含まれていることを知り、子どもたちの健康増進のために牡蠣のエキスを食品に使うことを考えました。

その際、栄養剤ではなく、お菓子に入れることを思いつき、苦心の末、栄養菓子グリコの商品化に成功します。そして栄養価の高いグリコを、より多くの人々にアピールするため、目を引きつける色のパッケージ、ハート型ダンス、万歳でゴールするランナー、1粒300メートルのキャッチコピーなど、マーケティング的に斬新なアイディアを次々折り込み、他の菓子との差別化と商品イメージの確立を図りました。

道頓堀の江崎グリコ看板
写真=iStock.com/LeeYiuTung
※写真はイメージです

また「子どもたちの仕事は食べることと遊ぶこと」との考えから、栄養菓子グリコと豆玩具を1つの箱に入れて売り出すといった工夫をしています。つまりグリコのおまけです。

さらに、試供品の配布、自動販売機の設置などにも取り組みました。まさに食の世界のイノベーターといえる存在です。