発売40年超のベテランが選ばれる3つの理由

さて、冒頭に記した「ロングセラーが多い」を裏づけるために、発売年も加えてみた。

13ブランドのうち、7ブランドが発売40年を超える。最年少は16年、最年長は58年、平均年数は36年強とベテラン中心なことが分かる。この人気を筆者は次のように考えている。

(1)手頃な価格と、どこでも買える利便性
(2)メーカー各社の創意工夫
(3)ブランドへの安心感とノスタルジー消費

引き続き注目ブランドを紹介し、コロナ禍での(3)の消費者心理を見ていきたい。

在宅勤務の息抜き、「ちょい食べ」が定着

職種で異なるが、多くの社会人が在宅勤務中心となり、アイスの消費シーンも変わった。

「ピノ」(森永乳業)を愛する30代の会社員(女性)は、こんな喫食ぶりを明かす。

「(一口アイスの)ピノは冷凍庫に必ずストックし、毎日食べているほど大好きです。一気に6個を食べずに1個ずつ食べて、少しの満足感を楽しみます」

同じような話は、「アイスの実」(江崎グリコ)のマーケティング担当者も話していた。

「コロナ以前の平日は帰宅後に食べることが多かったのが、在宅勤務では、目覚めとして、アイスの実を数粒食べたり、デスク作業やオンライン会議の合間に食べたりするなど、平日の日中に食べられる時間が増えたのも大きい、と考えています」

業界では、最初の緊急事態宣言下の2020年4月から“マルチパック特需”が起きた。同年4月~7月の市場全体は対前年比約102.9%(インテージ調べ)を記録し、巣ごもり用に紙箱や袋に入った複数個数のマルチパックが売れた。

筆者撮影
アイス購入額で日本一になることが多い石川県金沢市は、マルチパックのアイスが半額になることも多いという=2019年11月

購入時間帯にも変化が出ていた。これまで目立たなかった「9時~11時」「13時~14時」に買う人が増え、逆に19時以降は減ったという。この流れは現在も続く。

職場で同僚と一緒に執務しながらではできなかった、仕事中の息抜きアイスは、在宅勤務で特に進んだ行為だ。その際に選ばれるアイスは、昔から親しんできたブランドが多い。