キリンシティは今年3月、全国の店舗で「飲み放題」をやめると発表した。背景には「適正飲酒」を求める世界的な動きがある。だが、経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「少なくとも2020年代の間は、飲み放題はビジネスモデルとして生き残る」という――。
居酒屋で乾杯する男女
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです

「外でお酒が飲めなくなった」ふたつの日付

少し明るいニュースが入ってきました。10月以降、緊急事態宣言が発令されている地域でも飲食店でのお酒の提供が再開されるかもしれないという話です。「ワクチン接種が進めば」という条件つきですが、またお店でお酒が飲めるようになるのは嬉しいことです。

ちなみに、いつからおおっぴらにお酒が飲めなくなったのか、みなさん覚えていらっしゃいますか? ふたつの日付で説明しましょう。

ひとつは2020年12月15日です。11月までは経済をまわす意味で飲食や旅行は奨励されていたのですが、11月下旬から第3波が立ち上がり状況が急変します。Go To イートとGo To トラベルが相次いで停止し始めたのがこのタイミングです。

菅首相は12月14日、Go To トラベルを12月28日から2021年1月11日にかけて全国一斉に停止することを表明しました。その夜に政府の「会食は4人まで」というガイドラインを破って銀座で8人のステーキ会食をしていたことが翌日の15日に発覚。大問題になりました。政府は「5人以上と一律に決めるものではない」と強弁したものの、12月15日を境に大人数での会食は公的にはNGな雰囲気になり、忘年会のキャンセルが相次ぎました。

もうひとつが2021年4月25日からの3度目の緊急事態宣言です。このときから東京都では飲食店での酒類提供が禁止になりました。政府は公式には認めませんが、背景には「なんとしてもオリンピックを開催しなければならない」というプレッシャーがあったことは間違いないでしょう。

「キリンシティ」の飲み放題がなくなっている

さて、ここからが本題です。こうして今年の秋、ほぼ1年ぶりに友人たちと会食できるようになったとしましょう。そこでキリンが運営するビアレストラン「キリンシティ」に出掛けた方は、ある変化に気づくことになると思います。

飲み放題がなくなっているのです。

実は今年3月、キリンシティは全国の店舗で飲み放題をやめると発表しました。これは親会社であるキリンHDの経営方針に沿ったものです。それには3つの理由が発表されています。「多量飲酒の防止」、つまりアルコール健康被害を抑えるのがまずひとつ。次に「お客様に安心してご飲食いただける環境づくりの強化」、泥酔して大きな声で会話をする酔客が特にコロナ禍では問題だったことから、これもよくわかります。