2020年代を通して、飲み放題は生き残る

このWHOの勧告の中にハッピーアワーなどの原価割れ販売や、今回のテーマでもある飲み放題についての禁止ないしは制限も盛り込まれていて、そこは日本ではまだ未着手の課題とされていたわけです。そこにキリンがもう一歩踏み込んで、自社運営の32レストランで「飲み放題をやめよう」と動いたのが今年3月のニュースだったと考えていいと思います。

さて「飲み放題の禁止」が世界的な動きだというのは事実なのですが、日本でこれから先、飲み放題はなくなるのでしょうか?

たばこがどんどん街中で吸いづらくなってきた前例もあるので楽観視はできないのですが、それでも私はお酒の飲み放題は、少なくとも2020年代を通じてみればビジネスモデルとして生き残ると予測しています。理由は飲み会の幹事のニーズが高いからです。

喫煙エリアのサイン
写真=iStock.com/Christopher Tamcke
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「飲み放題」がない頃の幹事はとても大変だった

昔、飲み放題がそれほどポピュラーではなかった時代、飲み会の幹事は結構大変でした。私の20代がまさにそういう時代だったのですが、当時は会社の中で大人数の飲み会が定期的にあって、若手社員が交代で幹事を引き受けなければならない。それで苦労して飲み会を設定するのですが、当日になると必ず幹事の目を盗んで高いお酒を注文する中堅社員が出てくるのです。

20人以上の宴会だと特に大変で、遠くのテーブルに見慣れない高そうなボトルが置かれているのを見つけてはそちらのテーブルに移動して注意します。すると先輩が「俺が払うから大丈夫、大丈夫」というので「本当に払ってくれますね?」と念を押すのですが、次の日に本当に払ってもらうのがまた一仕事になるわけです。

今は飲み放題のおかげで状況が変わりました。宴会のときには「飲み放題つき5000円プラン」が非常に役立ちます。なにしろ会費が最初から確定しますし、税法上もひとり5000円以下なら、シチュエーションにもよりますが経費で落とすことも可能になります。

二次会の際にも飲み放題は大切で、終電間際に8人くらいの人数で場所を探す際に、たとえば閉店までの1時間を「飲み放題つきで税込2000円」みたいに料金提示してくれる居酒屋だと本当に助かります。それであれば席についた段階でひとり2000円徴収して、終電が近くなるたびにひとり減り、ふたり減りとなっても幹事は支払いに窮することはなくなります。