日本の消費者習慣に合わせた施策を提案した

さて、キリンHDが象徴的に、傘下のビアレストラン32店舗だけで飲み放題をやめるというのは社会的なメッセージとしてはわかります。それでも、キリンビールを販売しているそれ以外の大多数の飲食店については飲み放題をやめるよりも飲み放題のやり方を見直したほうが効果は高いのではないでしょうか。

WHOの勧告をそのままのむのではなく、日本の消費者習慣にあった形で飲み放題制度を存続させるとしたら? 私がキリンの経営者だったら以下のような飲み放題改善策を模索したいと思います。

(1)プレミアム飲み放題のノンアルメニュー強化

多くの居酒屋で飲み放題には2つのメニューが用意されています。飲み放題1500円とプレミアム飲み放題2500円といった形です。このふたつのプランの一番大きな違いは、通常のケースだとビールが入っているかいないかです。

酒税が高いビールが入っているのがプレミアム飲み放題で、いわゆる第三のビールといわれる新ジャンルがビールの代わりに入っているのが飲み放題というのがよくあるケースです。そして人気が高いのは当然ですがプレミアム飲み放題の方です。

ただプレミアムを支払っている分、もうちょっと飲みたくなるのも事実。そこで提案なのですが、プレミアム飲み放題にもっと低アルコール飲料とノンアルコール飲料を充実してほしいのです。実は多くの居酒屋でノンアルコールビールは飲み放題メニューに入っていません。理由はメーカーが小瓶でしか販売していなくて原価が高いから。

5つのカクテルをそれぞれ持って乾杯
写真=iStock.com/zoranm
※写真はイメージです

でも健康被害を減らしたいのであればこの販売制度はゴールとは逆行しています。特にお付き合いで飲んでいる大多数の参加者にとっては、途中でウーロン茶に変更するよりももう少しリッチな選択肢は欲しいところです。それはメーカーだったら対策をつくれる消費者ニーズです。

たとえば業務用の大容量のノンアルコールビールの商品化もそうですし、低アルコールカクテルもラインナップに欲しいところ。キリングループのメルシャンが開発しているノンアルコールワインもぜひ飲み放題で飲んでみたいと思います。

スマホの6GB上限プランと同じ仕組みはどうか

(2)6杯上限プランの導入

食べ放題と飲み放題の大きな違いは、食べ放題と違って飲み放題は「元をとるまで飲もう」という意欲が少ない点です。大半の参加者が飲む量は少なくて2杯、多くて6杯に収まります。

だったらスマホの6GB上限プランと同じで、飲み放題の代わりに6杯上限プランを普及させるのはキリンの目指す方向としてもいいかもしれません。

オーダーの際に、

「あと2杯で上限になりますよ」

と従業員が声をかけてくれれば、飲むペースにもちょっと気を配るように消費者行動が変わるかもしれませんよね。