コンテンツの便利さよりも天気の投稿がやりがいに

では、実際のユーザーは、どのような点にメリットを感じて課金しているのだろうか。アプリ内のコミュニティでリポーターとして活動し、有料会員としてもアプリを使う3名に話を聞いた。

50代の男性ユーザーは、仕事で移動の機会が多いことからアプリを活用。よく使う機能は雨雲レーダーで、「会員のリポート内容が反映され、情報がリアルタイムに更新されていくので精度が高い」点をメリットに挙げる。また、任意の地点にゲリラ豪雨のプッシュ通知を設定できる有料限定機能も重宝しているという。

ウェザーリポートには、各地の空の様子が投稿される(「ウェザーニュース」より)

有料会員向けの機能が豊富で、新機能の追加も多い点に魅力を感じているとしながらも、同アプリを使う一番の理由は「自分も予報精度の向上に貢献しているという実感が得られること」だと話す。リポーターとしては10年以上にわたって活動。「天気に関心の高い人だけが集まっていることが、他のSNSにはない魅力」だという。

また、60代の女性ユーザーは、おもに日常生活の中での雨対策に活用。買い物に出かける前にアプリを開き、雨雲レーダーの動きによっては自宅を出る時間を遅らせたり、逆に降り始めまでに少し時間がある場合はすぐ出かけて早めに帰宅したりと調整している。台風のピンポイント予測や台風による交通への影響予測といった有料機能も役立っているという。リポーターとしては空の写真のほか、旬の食べ物など季節の話題についても投稿し、他のユーザーとの交流を楽しんでいる。

在宅勤務がきっかけでウェザーニュースの存在を知ったと話すのは、40代の会社員男性。YouTubeで配信されているウェザーニュースの番組からアプリの存在も番組を通して知ったという。それ以前は、天気の確認はスマホにプリインストールされているウィジェットで簡単に済ませていたそうだが、現在は雨雲レーダーをはじめアプリ内のさまざまなコンテンツを活用する。リポーターとしても1日5〜6件投稿するなど熱心に活動しており、「自分の投稿が単なる情報発信で終わるのではなく、実際に予報精度の向上に役立っている点にやりがいを感じる」と話す。

撮影=プレジデントオンライン編集部
オフィス内にはスタジオもあり、YouTubeなどで全国の天気情報を発信している

機能面よりも「好きだから使う」が人気の秘訣

3人のユーザーの話から感じたのは、「ウェザーニュースが好き」という思いだ。筆者は取材前は、「この機能が絶対に外せないから有料で使っている」「他社と機能を比較して、ここが優れているから気に入っている」といった話を聞けるものと予測していた。天気アプリという実用ツールである以上、機能面で選ぶのが当然だと考えていたためだ。

ところが、実際にユーザーから挙がってきたのは、コミュニティに参加する楽しさややりがい、そして、そのような場を提供してくれるウェザーニュースに愛着を持っていることが伝わってくる話だった。もちろん、機能面での長所についても聞くことはできたが、「機能が便利だから課金する」ではなく、「お気に入りのアプリだから課金する→有料機能も便利に使っている」という流れのように感じた。

これは、リポーターという形でユーザーコミュニティを築く同社独自のスタイルがあるからこそだろう。つまり、ウェザーニュースは天気の情報を提供する一面に加え、ツイッターやインスタグラムのように、天気特化型のSNSとしての一面を併せ持っている。一方的に提供された情報を受け取るのではなく、ユーザー自身が天気の投稿を通して精度向上に貢献できる、自分が参加できるワクワク感が得られることで、「便利だから使う」から「好きだから使う」になり、単なる「ユーザー」から「ファン」変わっていくのではないだろうか。

もちろん、同アプリは雨雲レーダーの性能や予報精度といった機能面の高さもしっかり備えているが、性能だけを訴求した場合、どうしても競合サービスとのシビアな機能比較・機能競争になってしまう。それとは別の軸での「ユーザーをファンにするしくみ」を持っていることが、有料会員増加の好調ぶりにもつながっているのではないかと感じた。