日本を含めた世界各国が温室効果ガスの排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)に動き出している。NewsPicksニューヨーク支局長の森川潤さんは「アップルやマイクロソフトといった巨大テクノロジー企業もCO2削減へ野心的な目標を掲げている。あらゆる業界、企業に気候変動対策の大きな波が押し寄せていることは間違いない」という――。
※本稿は、森川潤『グリーン・ジャイアント』(文春新書)の一部を再編集したものです。
iPhoneの部品や素材の製造元にも派生する
企業へ気候対応を要求しているのは、投資家だけではない。もう一つ忘れてはならないのは、製造業における「サプライチェーン」という観点だ。サプライチェーンというのは、自動車や電気製品などの最終製品ができるまでの、原料から、部品、組み立てまでの全工程のことを指す。
2020年7月、米アップルは、事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて、2030年までにカーボンニュートラルにすることを目指すと発表した。もちろん、石油や石炭を扱うエネルギー会社と比べ、iPhoneやITサービスを展開するアップルは、そもそもの排出量が膨大なわけではない。とはいえ、世界の企業がIPCCの評価報告書を基に2050年を目標に掲げるなかで、20年前倒しというのは野心的な目標だ。
「気候変動に対するアクションは、新時代のイノベーションの可能性、雇用創出、持続的な経済成長の礎になり得るのです。カーボンニュートラルに対する当社の取り組みが波及効果をもたらし、さらに大きな変化を生み出すことを期待しています」と、アップルのティム・クックCEOは発表に際し、コメントしている。
これは、裏を返せば、再エネ100%で部品や素材を生産しないと、iPhoneに使ってもらえなくなるということだ。これはアップルが公表するサプライヤートップ200社のうち、34社を占める日本企業にとっても同じだ(2020年現在。トップ200のうちの日本企業の数は2017年の43社から減り続けている)。