特にマイクロソフトの本気度が見えるのが、自社による直接の排出(スコープ1と呼ばれる)だけでなく、電力会社から購入する電気や熱(スコープ2)、さらにはサプライヤーから購入する原材料や部品から社員の出張など1、2以外のすべて(スコープ3)までを含めて、カーボンネガティブを実現しようとしているということだ。
具体的には、社内でのカーボン・プライシングを始めることで、スコープ3を2030年までに半減させ、さらに炭素回収技術でネガティブを実現していくのだという。この野心的な取り組みをマイクロソフトは「moonshot(月面着陸。実現困難な目標へのチャレンジの意)」と呼んでいる。
現場の声が経営トップを動かしたアマゾン
米国の時価総額ランキングで、アップル、マイクロソフトに次ぐ3位に当たるのがアマゾンだ。アマゾンの場合は、従業員からの厳しい突き上げがカーボンニュートラル宣言につながった側面がある。
アマゾン社内では2018年に「Amazon Employees for Climate Justice(気候の正義を求めるアマゾン従業員)」という活動団体ができており、350人を超える従業員が実名でコメントを寄せているほか、2019年4月には従業員4500人が気候変動対策に真摯に取り組むようにジェフ・ベゾスCEO(当時)に書簡を送った。これを受けてアマゾンは排出量削減の目標を厳格化し、2019年9月に2040年までのカーボンニュートラルを宣言した。
実際のところ、アマゾンにとってネットゼロは、かなりハードルが高い。自社倉庫の再エネ化だけでなく、世界中を飛び交う荷物を運ぶトラックや飛行機など配送でのCO2削減にも取り組まないといけないからだ。だが、アマゾンが立ち上げた「気候変動対策に関する誓約」にはすでにペプシコやビザなど100社以上が参加しており、徐々にネットゼロへの取り組みが進むことは間違いない。