2014年にアマゾンが発売したスマートフォンの「ファイアフォン」は、発売からたった1年で販売中止になった。なぜ失敗したのか。学びデザイン社長の荒木博行さんの著書『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)より一部を紹介する――。
2014年7月25日、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリンにあるAT&Tの店舗に展示されている、新しいAmazon Fire Phone。オンライン小売業のアマゾンが独自に開発したスマートフォン「Fire Phone」が、米国でAT&T限定で販売された。
写真=EPA/時事通信フォト
2014年7月25日、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリンにあるAT&Tの店舗に展示されている、新しいAmazon Fire Phone。オンライン小売業のアマゾンが独自に開発したスマートフォン「Fire Phone」が、米国でAT&T限定で販売された。

見た瞬間ワンクリックで即購入

2014年当時は既にiPhoneやアンドロイドベースのスマートフォンが乱立している時代でした。この競争が激しい市場において、遅れて参入したアマゾンは、どのような勝ち筋を描いたのでしょうか。

このファイアフォン(Fire Phone)というスマートフォンの最大の特徴は、「電話もできる携帯レジ端末」と表現されるほどの「買い物体験の向上」にあります。

具体的には搭載された「Firefly(ファイアフライ)」という機能です。

この機能を活用すると、スマートフォンのカメラでDVDや書籍の表紙を撮影することで、すぐにアマゾンのウェブページでレビューを読んだり購入したりできるようになります。さらにはカメラだけでなく、テレビや映画、音楽などをファイアフォンに聞かせることで、コンテンツを特定し、すぐに購入することが可能になるのです。

つまり、ファイアフォンは、実空間にあるもの全てをスキャンの対象にするツール、とも言えるでしょう。

もちろん、単なる検索機能であれば、アプリ上ではそれほど難しくないかもしれません。

しかし、このファイアフォンの特徴は、検索から購入に至るまでのシームレスかつスピーディな動作にあります。当然、この裏側にアマゾンの巨大なデータベースがあるのは言うまでもありません。つまり、膨大な商品画像やコンテンツデータのストックがあるため、認識できるものの種類が多く、かつ次の瞬間ワンクリックで即購入できるものの種類も多いということです。「1億を超えるアイテムを、いつでもどこでも1秒で認識できる」と当時アマゾンのCEOだったジェフ・ベゾスは語りましたが、このシームレスな体験はアマゾンでしか実現できないことでした。