カネ儲けのできないことに首を突っ込むことはない
私は、素人考えだが、中国やアメリカのように短い期間で大規模な病院を建てることがなぜできないのか、例えば、東京ドームに何千人分というコロナ患者のための病床をなぜ造れないのか、疑問に思っていた。
だが、発想した役人はいたかもしれないが、ネックになった大きな要因の一つは長年、政治と癒着してきた医師会の存在だったのではないのか。
この“不可侵領域”に斬り込むのかと思って見ていたが、大越というよりNHKの限界だろう、中川会長にインタビューをしながら、相手の意見を聞き置くだけで、医師会のやり方に強い疑問と批判を加えることはしなかった。否、最初からする気はなかったというべきであろう。
中川会長は大越にこういってのけた。
「税金を莫大に投入されて経営しているところ(公立病院)と自立して経営努力だけでやっているところ(民間病院)とはちがうということは分かってほしい。
世界で最も評価が高い医療の日本において、守らなければならないことがあります。それはどんな新興感染症が襲来しても、その医療とそれ以外の通常の医療が絶対に両立していなければならない」
医師会会員はカネ儲けのできないことに首を突っ込むことはない、私はそう理解したのだが。
政治家と長年癒着してきた医師会の体質
ここで日本医師会の歴史を振り返る余裕はないが、日本医師会は一貫して自民党の大口献金先であり、集票マシンでもあった。
政治家たちへのロビーイングは当たり前で、自分たちに不都合な“改悪”は力で潰してきた。
先の本で辰濃がこういっている。
「かつて日医は、カルテの開示の法制化を阻止してきた。インフォームド・コンセントの法制化もつぶした。植松(治雄16代会長=筆者注)執行部がつぶした医師免許更新制度だって、そうだ。
全部、国民にとっては必要な制度だった。
国民の利益と日医の利益が相反するときに、政治家を使って日医の利益を優先すれば、私たち国民は日医を自分たちの利益代弁者だとは思わない」
いい古された言葉だが「医は算術」なのである。それを最優先する医師会の本心が、コロナによってはっきりしたということであろう。
このところ、週刊誌による中川会長のスキャンダル暴露が続いているが、その背景には、世界的なコロナ感染症蔓延の中で、一番頼りたい医者たちの多くが、自分たちの利益や都合を優先させていることに、国民の間に批判や反発が広がっていることがあると、私は考えている。