「難民」ではなく「一人のグローバル人材」

「私たちが出会った難民の方たちは、母国ではプログラマー、ジャーナリスト、教師、医者、コンサルタント、社会起業家などで、中には4か国語を話せる人もいます。学歴もあり、リーダーシップを発揮し、活躍してきた人が多いんです」と話すのは、WELgeeで就労伴走事業部を統括する山本菜奈さんだ。

就職先で、同僚とランチを取る難民申請者。2019年撮影 WELgee提供

山本さんたちがこれまでに関わった190人の半数以上が、大学か大学院卒の学位を持っているという。母国で民主化運動や平和運動に参加したり、宗教を変えたりしたなどのさまざまな理由で弾圧をうけるなどし、命の危険を感じて日本に逃げてきた人たちだ。

難民申請中の外国人に付与される在留資格は「特定活動」と呼ばれ、6カ月ごとに在留期間を更新しながら、長い場合は10年以上も難民認定の結果を待つ人もいる。WELgeeは、企業と接点を作ることで、彼らに難民認定以外の新しい選択肢を作ったというわけだ。

ある西アジア出身の男性は、WELgeeの事業を通じてゼロからプログラミング技術を学び、IT系のベンチャー企業に就職した。また、西アフリカから来た男性は、大手オートバイメーカーの新規事業開発部のアフリカ事業チームに参画した。

とはいえ、マッチング先の企業を探すのは容易ではない。日本語スキルの問題や「難民」という言葉のイメージが障害になるという。ダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、女性やLGBTの人たちを積極的に採用しているという企業でさえ、採用には消極的だったそうだ。

「難民という言葉が抱えるあいまいな響きに加え、『貧しい』『かわいそう』というイメージが強すぎて、なかなか一人のグローバル人材としてみてもらえないんです。そこで、プロセスの初期に実際に会ってもらい、彼ら・彼女らの社会に対する視点や、ありあまる向上心、バイタリティに触れてもらうようにしました」

「受け入れないともったいない」

山本さんは、日本のビジネスセクターと一緒に、「日本社会として、難民の人を受け入れないともったいない。彼ら・彼女らがいたほうが、日本の企業も社会も豊かにカラフルになる」という価値観を広げたいと話す。

また、今回注目を集めた入管法についても、「難民保護」という視点だけではない関心の持ち方があるのではないかという。

「『かわいそう、知らなきゃいけない』という入り口から難民の存在を知る人もいますが、『同じ職場で難民の人が働いているんだよね』『難民の人が立ち上げた面白いサービスを新聞で見たんだよね』という人も増えてくればいいなと。そこをきっかけに、入管法の問題を自分ごととしてとらえ、『難民の人たちが日本で安心して働いたり、暮らしたりできるようにするためには、どんな政策が必要か、誰に投票すべきか』を考えるようになってほしいです」

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