状況認識の甘さ、危機感の乏しさが露呈

4月25日、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に3回目の緊急事態宣言が出た。大阪府では2回目の緊急事態宣言を2月末に解除してから、猛烈な感染拡大が起きた。「まん延防止等重点措置」の効き目も薄く、4月13日には新規感染者の1日の発表が初めて1000人を突破。吉村洋文大阪府知事は緊急事態宣言の発出を政府に要請した。

3度目の緊急事態宣言を発出し、会見する菅義偉首相=2021年4月23日、首相官邸[代表撮影]
写真=時事通信フォト
3度目の緊急事態宣言を発出し、会見する菅義偉首相=2021年4月23日、首相官邸[代表撮影]

また、3月に緊急事態宣言を解除した東京でも、後を追うかのように感染者が増加。大阪に追随して、緊急事態宣言が要請された。明らかに「第4波」の到来を招いてしまったわけだ。

しかし、菅義偉首相はその段階になっても「第4波」を頑なに否定していた。4月14日の参議院本会議で答弁に立った菅首相は、「現時点で全国的な大きなうねりとまではなっていないと考えている」とし、「関西圏など特定の地域を中心に急速に感染拡大が進んでいる。政府として強い警戒感を持って対応すべき状況にある」と述べるにとどめた。

ちょうど同じ日に、衆議院内閣委員会に出席していた政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、真逆の見方を示した。「いわゆる『第4波』と言って差し支えない」と述べたのである。はからずも菅首相の状況認識の甘さ、危機感の乏しさが露呈することになった。

どこから「変異型」ウイルスはやってきたのか

結局、政府は、知事らの要請に背中を押される形で、緊急事態宣言の発出に踏み切った。吉村知事が2回目の緊急事態宣言時の対応では不十分だとして、大型商業施設や娯楽施設の休業要請を口にし、政府もそれを認めざるを得なくなった。

第4波で急速に感染者が増えている理由として、「変異型」ウイルスのまん延拡大があると政府も専門家も指摘している。3月に2回目の緊急事態を解除した時には予想しなかった変異型が広がっていると言いたげだ。それではいったい、どこから変異型ウイルスはやってきたのか。

3月中旬の時点で、もともと変異型ウイルスが日本国内に存在していたと言うのならば、緊急事態宣言の解除をするべきではなかった、と言うことになる。一方、最近になって海外から入ってきたと言うのならば、その侵入を許した「水際対策の不備」が原因ではないのか。いずれにせよ、人災とまでは言わないにしても、政策判断の失敗が第4波を引き起こしたと言えるだろう。