審査は平均4年以上
また、難民支援協会の石川さんは、日本には難民の包括的な保護に関する法律が必要だと訴える。
「難民申請してから審査が終わるまで、昨年の平均では52カ月(4.3年)かかっています。難民をどう認定するかというだけでなく、その間の彼ら・彼女らの生活をどうするか、認定された人が自立して日本に定住するために何が必要かまでを踏まえた、包括的な制度が必要だと思います」
特に来日直後の難民は、短期間で困窮生活に陥ることが少なくない。知り合いもなく、住むところもなく、日本語もできないため情報へのアクセスも限定的という状況で、ホームレスになってしまう人も多い。民間の支援団体につながることができた人たちは、こうした団体の援助に頼りながらなんとか生活している状態だという。
単純に比較はできないが、フランスなど、多くの難民が来る国では、政府が難民向けのシェルター、仮の住宅などさまざまな施設を供給している。フランス政府によると、2020年には、こうした施設の収容可能人数は10万7000人。2021年には、受け入れ可能人数を4500人分拡大し、審査に要する期間の短縮(最大6カ月)も行ったそうだ。ホテルの部屋などを国が借り上げ、緊急のシェルターとして提供する場合もあるという。
一方、日本にも難民認定申請者のための宿泊施設はあるが、利用できる人数は極めて限定的だ。たとえば、2019年度に利用した実績は30人と国会で報告されている。
企業と難民申請者をマッチング
現在、難民申請者が長期に安定的に日本に住むことができる唯一の方法は、政府による難民認定だが、実際は、申請をしても認定される可能性は低い。
そこで、もし、難民申請者が正規に就職できれば、彼らの在留資格を「技術・人文知識・国際業務」という、就労先がある限り日本で安定的に暮らし、働き続けることができる資格に切り替えることができるのではないかと考えたのが、難民問題に取り組むNPO法人WELgee(ウェルジー)だ。
WELgeeは、企業とパートナーシップを組み、難民を人材として企業に紹介する「JobCopass」(ジョブコーパス)という事業を行っており、今までに12件の事例をつくった。うち2件では在留資格の切り替えに成功している。