F-Powerは、他の新電力と異なり子会社に発電事業者を持つ。そこから電力供給を受ける形でリスクヘッジをしており、JEPXに完全依存の新電力よりは耐性はあったはずだ。
その点を考慮すれば、なおさら(利ザヤの少ない)安い価格で電気を売ることで競争性を確保するスタイルが、JEPXやインバランスの変動を吸収する余地を削っていたとも分析できる。
「売れば売るほど赤字」の構図
特にこの冬は過去とは比べ物にならないほどにJEPXの値段が高騰し、インバランスの値段が高騰した。F-Powerは2018年4月、契約電力が430万kW(最高値)に達したが、2018、2019年決算で赤字と債務超過となり、契約電力を約1分の3に圧縮。それでも、いま分析したとおりの吸収余地の少ない料金設計と、契約電力のボリュームの多さが災いした。
「売れば売るほど赤字」が直撃し、大手であるからこその脆弱性が露見した。
同様の影響は楽天でんきにもあった。楽天でんきが新規受付の停止措置を実施。受付は再開したものの、ポイント付与対象から楽天でんきを外すことになった。
当然、この他にも多くの新電力が影響を受けている。1月分のインバランス料金の最初の支払い期日である4月5日を皮切りに、これから冬のインバランス料金の支払いが続くことになる。ここでの請求にキャッシュが追い付かない場合、F-Powerのように、相次ぐ経営破綻が起こる可能性もあり、市場では4月危機説がささやかれるほどだ。
「値上げに踏み切る可能性は十分にある」
とはいえ、新電力すべてに悪影響があったわけではない。自社保有の発電所の活用も含め、手元に市場に卸せる電力を確保する体制を敷いている小売業者にとっては、JEPXは「売り場」でもある。この冬の卸価格の急騰は、そうした経営努力をしているか否かで新電力の明暗がはっきり分かれることになったと言える。
特に今回のインバランス危機は、新電力の力が試され、ふるいにかけられるプロセスであると見てもいい。
電力自由化は、これまで閉鎖的であった電気市場に競争原理をもたらしたことは間違いない。それは各社の経営努力を促し、消費者の利益を増進する方向に寄与する。重要なのは、電力会社を選ぶ個人が、適切な小売業者をしっかりと見極めることだ。
今回のF-Powerの経営破綻は、薄利多売方式を採っていた新電力たちに対する値上げ圧力をかけたことは間違いがない。楽天でんきがポイント付与対象から除外したことも実質値上げであったように、他の大手も同じだ。今冬のインバランス請求をしのいだとしても、次に同様のことがあれば、各社値上げに踏み切る可能性は十分にある。