電力小売り自由化から4月で5年を迎えた。自由化は電力業界をどう変えたのか。再生可能エネルギー事業を手がけるafterFITの前田雄大さんは「新電力の最大手だったF-Powerの倒産で業界の再編や淘汰が進む可能性がある。自由化にブレーキがかかり、電気料金の値上げは避けられなくなる」という――。
新電力最大手「F-Power」が経営破綻
新電力の大手として知られ、2018年4月には電力販売量で一時新電力のトップに立ったF-Powerが3月24日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請した。負債約464億円を抱え、経営破綻したのである。
一時は業界トップに立った企業が、なぜ経営破綻したのか。そして、私たちが支払う電気料金はどうなるのだろうか?
そもそも新電力とは、2016年4月の「電力の小売り全面自由化」で生まれた電力会社だ。以前は、東京電力や関西電力といった地域の電力会社10社しか、個人や企業等に電力を小売りすることができなかった。それが自由化によって約700社の新規勢力が電力市場に参入。消費者は電力会社を選び、電気を購入できるようになった。
参入した新規勢力は、携帯キャリアauのauでんき、楽天の楽天でんき、ガソリン業界ENEOSのENEOSでんきなど。自由化で、電力を扱っていた業種でなくとも、電力を売ることができるようになった。
新電力はほとんど自社の発電所を保有していないため、販売する電力を日本卸電力取引所(通称JEPX)で調達している。多くの新電力はこのJEPXで、電源を有する電力会社から電気を買っている。価格は卸取引所の名のとおり、市場原理で決定される。
小売り側は、利益確保を念頭に置けば、できる限り安く仕入れて、利ザヤを多く確保したいというインセンティブが働く。それが今回のF-powerの経営破綻にも深く関係している。