電力自由化で料金プランが増えたけど……

ここで、多くの一般家庭が契約している東京電力の「従量電灯B」というプランを例に電気料金の仕組みを簡単に説明したい。

電力会社はJEPXの卸価格に、送配電などのコスト、電力会社の利益分(利ザヤ)を上乗せした小売価格を設定。各家庭は、基本料金と1kWhあたりの料金を電力会社に支払う仕組みだ。

とはいえ、結局どの電力会社もJEPXから電力を調達しているのは変わらない。調達の仕方で多少の差は出ても、同じような価格で電力を購入することになる。経産省の資料によれば、2018年度の平均価格は1kWhあたり9.8円、2019年度は7.9円だった。

そこで電力自由化の後に参入した新電力は多種多様なプランを掲げ、再生可能エネルギーの比率が高いプランなど、「電気の色」で差別化した商品を出している。

しかし消費者からすれば、基本的に電気は電気でしかない。つまり、新電力は「お求めやすさ」で勝負をする以外に効果的な方法はない。

それまで10社が独占していた市場から、電力小売りシェアを奪うために、新電力が各社しのぎを削ってコスト勝負に出ている。新規獲得のために、契約をしたら基本料金を数カ月サービスする業者や、楽天でんきのようにポイントの付与と組み合わせお得感を出そうとする業者、1kWhあたりの電気代を安く設定し薄利多売を行う業者など多様だ。

電力需給がひっ迫し、卸価格が上昇

さて、そんな中、この冬、何が起きたのか。

JEPXの電力の需給が逼迫ひっぱくし、卸価格が跳ね上がった。一時は1kWhあたり250円に急騰。平均価格は150円を記録した。この冬、JEPX価格は通常時の10倍となった。原因は寒波による電力需要の増大、液化天然ガス(LNG)の供給不足などと分析されている。

電力小売りは、顧客に対して、仕入れ値が高くなったので売らないという選択を取ることができない。1単位あたり150円で仕入れたものを二十数円で売らないといけないという強制赤字の状況が続いた。売れば売るほど赤字になり、新電力の経営は圧迫された。

この状況で最も影響を受けたのが薄利多売型の電力会社だ。特にJEPXに依存する形で小売りを展開する新電力は、顧客数が多ければ多いほど、期間に計上した赤字額が膨らむ図式となった。

さらに追い打ちをかけたのがインバランスという制度である。

新電力を含む小売業者は電力を売ってはいるものの、各家庭に電力を届けているのは、一般送配電事業者である。

最終的に送配電事業者が過不足ない電力供給を行っている裏で、小売業者は、自社が契約を勝ち取った顧客に対する電力の供給について、十分な量を確保しないといけないという責任を負っている。ただ、電力の調達はJEPXによる市場原理なので、当然買い漏れが発生しうる。そのときに採られるのが「インバランス措置」である。