農業が持つ多面的な機能

写真=坂ノ途中
レストラン「本と野菜 OyOy(おいおい)」の内観

また2020年6月には、京都の中心部・烏丸御池駅直結の商業施設「新風館」の中に、レストラン「本と野菜 OyOy(おいおい)」をオープンした。同社が扱うオーガニックの野菜を調理したおいしい食事を楽しみつつ、提携している東京の書店・鴎来堂がセレクトした本を選んで購入することができる。

「京都のど真ん中にフラッグシップ的な店を出したのは、自分たちの取り組みを一部の『エコやオーガニックが好きな人々』だけでなく、より広く世の中一般の人たちに知ってもらいたい、と思ったからです。うちはもともと社内にキッチンがあり、そこでレシピを開発したりまかないを作っているので、調理が得意なスタッフもいました。商業施設の飲食店で食べるお客さんは、スマホを眺めて『ながら食い』をする人が珍しくありませんが、うちの店の料理を食べた人のなかには『はっ』とした顔をして、スマホから手を放してくださる方もいます。書店の鴎来堂とコラボしたのも、単に食事を味わうだけでなく、その奥にある自然環境について考えを巡らせる機会を持ってもらいたいのが理由でした」

農業は単に「人間にとって必要な食料を生産する」だけでなく、自然環境の保護や、村落の共同体を維持するといった、多面的な機能を持っている。

コロナ禍によって人々のライフスタイルが大きく変化し、人口が密集する都市部に住み続けることの意義について多くの人が疑問を抱くようになった今だからこそ、坂ノ途中の「農業を通じて自然と調和する」事業の発展に期待を寄せたい。

撮影=佐藤新也
京都本社の入り口には提携先農家からの手紙や写真が飾られている
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