長寿日本一といえば沖縄県をイメージする人が多いかもしれない。だが、現在の最長日本一は男女共に長野県だ。一体いつ頃から、どうしてそうなったのだろうか。東京医科歯科大学副学長の古川哲史氏は「その成功の秘密は、食生活の改善・充実を中心とした『予防医療』にある」という——。

※本稿は、古川哲史『最新研究が示す 病気にならない新常識』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

日本の家族の幸福との会食
写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです

50年で最長寿県となった長野県

日本では、毎年、県別に寿命の長さが発表されています。最長寿県はどこだと思う? ときいたら、沖縄県じゃない? という答えが最も多かったのですが、確かに少し前までは、沖縄県が最長寿県として有名でした。

ですが、今では沖縄県は男性の場合は47都道府県中30位(女性は3位)です。これは沖縄県民の生活様式の急速な欧米化、特にファストフードの普及と車社会の影響が大きかったようです。

最長寿県は、意外なことに長野県です。しかも男性は1990年、女性は2010年に1位に輝いてから長年その座を譲っていません。

長野県は、もともと長寿県だったわけではありません。昭和40年の統計を見ると、男性の寿命は第9位、女性が第26位です。特に脳卒中による死亡率は1965年は全国1位、その前後数年をみても常にワースト3に入っています。

長野県は、四方が山に囲まれており、冬になると雪に閉じ込められるので、野沢菜に代表されるように保存食が重宝されてきました。食品を保存するためには、塩分を多く使います。塩分が細菌などの微生物の繁殖を防ぐからです。

そのため昭和40年代(1965~1974年)の長野県では、塩分摂取量が全国で4番目に多く、高血圧・脳卒中による死亡率が高かったのですが、その頃、圧倒的に寿命が長かったのが沖縄県でした。50年の間に、沖縄県と長野県の立場は完全に逆転してしまったのです。

一体なぜなのでしょう。