「PCR検査で陰性を確認しなければ、受け入れられません」

「わたくし、湘南鎌倉総合病院の救急調整室の永澤由紀子と申します。転院をご相談したい患者がいまして……はい、はい……」

次第に永澤さんの表情が曇っていく。「わかりました。ありがとうございます」と受話器を置く。

1件めに連絡した病院は、「夜間の受け入れは厳しい」ということで受け入れを拒否した。

2件め。

「ベッドが空いておりません」

3件め。

「当直医の私では判断できかねます」

4件め。

「当院ではADLが自立した方(一人で身の回りができる人)のみを受け入れています」

5件め。

「その患者さんは吸引が必要でしょうか?」(必要、と永澤さんが答える)「でしたら受け入れできません」

* * *

次々に断られて9件め。これまでのように永澤さんが一通りの説明を終えると、

「抗原定量検査で陰性を確認したとのことですが、PCR検査で陰性を確認しなければ、当院では受け入れられません」と言う。

永澤さんが「わかりました。お忙しい中ありがとうございました」と受話器を置く。山上医師は大きなため息をつき、肩を落とした。

(第3回に続く。1月9日11時公開)

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