新型コロナウイルスの後遺症は仕事にどう影響するのか。2023年は1250件の面談をした産業医の武神健之さんは「昨年の面談の中で印象的だったのは、コロナ罹患後に症状が続いてしまう人たちとの面談だった。その症状も治療期間も実に多様だった」という――。
マスクを着用してサムズアップする男性
写真=iStock.com/kk-istock
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コロナ罹患から2カ月後にやってきた30代男性

私は産業医として2023年は1250件の産業医面談をしました。昨年は、コロナ禍に始まったリモート面談よりも対面での面談が多くなり、産業医的にもポストコロナの到来を実感した一年でした。

それでも、昨年の面談の中でも印象に残っているのは、新型コロナ感染症に関するものでした。コロナに関する理解が進み、病気の不安や疑問などの面談、コロナに感染した人との面談などは減った一方、コロナ罹患りかん後も症状が続いてしまう人たちとの面談があったのです。

今回は印象に残ったコロナ後遺症2例をご紹介させていただきます。

1例目は30代の男性、勤続年数6年のAさんです。コロナにかかってから、会社に来たり来なかったりの社員がいると部門から人事に連絡がありました。産業医面談に彼が来たのは、コロナ罹患後2カ月ほど経ったところです。

熱が下がっても疲れやすい状態が続く

彼に話を聞いてみると、コロナで3日ほど高熱が出ていた間は会社を休んだが、その後は仕事がたくさんあったので頑張って出社していた。だが、1週間ほど経つとまた熱がぶり返し、その後、平熱になってもとても疲れやすく頭がもやもやする状態が続いているとのことでした。そして今は体調に問題なく出社しても、忙しい日は午後になると頭が重くて回らなくなり早退したり、1日働けたとしても翌日は朝から全身に力が入らず休んだりすることを繰り返しているといいます。

本人もこの状態をおかしいと感じているものの、熱はなくコロナはもう治っているはずで、自分としては怠けているのではないが、チームに迷惑がかかっていることや、同僚たちからどう思われているのか気になってしまうとのことでした。なお、仕事は忙しいがストレスではなくやりがいを感じている、職場に特にストレスを感じる人はいないとのことです。

産業医面談ではコロナ後遺症の可能性があるので、後遺症外来を受診することをお願いしました。その後Aさんは通院治療をしながら、3カ月間ほど時短勤務や在宅勤務を併用して回復。現在は症状もなくなり、元通りに働いています。