2次的にメンタル不調になる可能性も十分にある

2例目のBさんは、50代で勤続10年以上のベテラン女性社員でした。コロナに罹患した時から倦怠感と息切れがひどく、かかっていた近所の内科医の勧めもあり、コロナ専門外来に早期から通院していました。しかし、2週間経っても症状は軽快せず、コロナ後遺症の診断書を会社に提出し休職することとなりました。

休職開始後、月1回産業医面談を行っていましたが、2カ月を過ぎる頃から、Bさんは睡眠障害、抑うつ気分、集中力・記憶量の低下を自覚するようになりました。いずれもいわゆるメンタル不調者に頻繁に見られる症状でもあります。

コロナ後遺症により働けず休職していることが、Bさんには大きなストレスでしたので、それが原因で2次的にメンタル不調となった可能性も十分ありました。一方、コロナ後遺症の症状として、これらの症状を呈しているだけの可能性もありました。また、両方の可能性が混在していてもおかしくはありません。

Bさんは主治医の内科医と産業医のアドバイスに従い、可能性があるならばと心療内科を受診し、投薬治療を始めました。すると1~2カ月ほどで症状は改善しはじめ、倦怠感や息切れもなくなり、心療内科の薬も終わり復職となりました。

医師による問診を受けている女性
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心療内科の受診が早期回復に結びついた

今でもBさんの症状が、2次的な精神疾患だったのか、コロナ後遺症の症状だったのかはわかりません。しかし、Bさんがメンタル不調症状を呈してから、治療のためにすぐに心療内科も受診してくれたことは、良かったです。原因の由来を考えるよりも、良くなって復職するためにはできることはなんでもする、というBさんの姿勢が、早期回復に結びついたと感じました。

新型コロナ感染症という病気に対する理解は、この3~4年間でだいぶ進んだと同時に、人々の持つ病気への恐怖も減ってきたと思います。昨年の産業医面談では、コロナ対策や不安対処法を相談しにくる人はあまりいませんでした。

昨年5月のコロナ第5類移行後は、新型コロナ感染症は、感染者も(社会的)隔離されることがなくなったので、より“普通の”風邪に近く扱われるようになりました。クライアント企業でも、コロナにかかったことのある人の話を普通に聞くようになり、ニュースにならないものの患者数の増加を感じました。多くの人は軽症で、熱もあまり出なかった印象です。

一方、罹患後しばらく咳や痰が続く人、疲れやすさや体調不良がなくならない人などもいて、この病気にかかった時の症状や治療にかかる期間は多彩でした。患者数の増加とともに、後遺症の相談もコロナ1~2年目よりも増えた印象です。コロナ罹患後も症状が続く(いわゆる後遺症)人が、数カ月間面談に来ることもありました。