「メンタル不調」と誤解する人もいた

厚生労働省のホームページでは、コロナ後遺症は「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである。通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にもみられる」ものと説明しています(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A」2024年1月31日閲覧)。

その症状は多彩で、代表的な症状は、疲労感・倦怠けんたい感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸どうき、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります。

また、症状は、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状もあるとしています。

私が昨年面談をしたコロナ後遺症の人の半分ほどは、実際は一度コロナが治り普通に出社して働き出してから、1カ月以内に再び体調が悪くなっていました。一度治っているため、本人もこれがコロナ後遺症とは思わず、単にやる気がないのだと思っていたり、出社できないのに明確な病名がつかない状態を見て、同僚や上司たちの中には“メンタル不調”と誤解する人もいました。

オフィスで体調に不安を感じている女性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

原因不明の不調で力尽きた社員が相談に来た

実際に、コロナ後遺症の症状は、嗅覚味覚障害以外は、いわゆるメンタル不調者が呈しても違和感のないものです。症状を呈した本人も、メンタル不調とは思いたくないものですが、最初からコロナ後遺症とは気がつきません。もちろん周囲も、コロナ後遺症だとは思いつきません。

このような中、誰にも言えず頑張るものの、とうとう力尽きて出社できなくなったり、周囲の目にも不調が明らかになり医者や産業医にくるパターンが印象的でした。

どのような病気も、早期治療が大切なのは言うまでもありません。無事に治った人に関しても、もっと早く気がついて治療を開始していたら……と思わずにはいられない経験を多くしました。

一方、早くにコロナ後遺症の可能性に気がつき専門家を受診した人でも、大事をとって休職をすれば、必ずしも早く治るわけではないというのが、コロナ後遺症の難しいところでした。