子供だけの病気ではない
「ぜんそく」といえば、子供の病気というイメージが強いのではないでしょうか。実は、大人になって発症することも多い病気なのです。
治療法の改善などで数は減りましたが、ぜんそくは死を招くこともある怖い病気です。今回は働き世代に大きく影響する、成人ぜんそくについてご紹介します。
ぜんそくとは、空気の通り道である気道に炎症が生じ、気道粘膜がむくんだり、気道の周りの筋肉が収縮することで気道が狭くなり、空気の通りが悪くなる病気です。炎症をくり返すと気道そのものが過敏になり、冷たい空気やアレルギー物質(花粉やハウスダスト)など外からの刺激に敏感に反応し、ぜんそく発作を起こします。
発作の程度は軽い咳から「ぜーぜー、ひゅーひゅー」という独特の呼吸音を伴う呼吸困難など、重症の場合は気道がふさがり窒息死を招くこともあります。
ぜんそくには、アレルギーが原因の「アトピー型ぜんそく」と、アレルギー以外の原因による「非アトピー型ぜんそく」があります。小児ぜんそくの70〜90%がアトピー型と言われる一方、成人ぜんそくでは非アトピー型が多くなります〔(厚生労働省「平成22年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト」第3章 気管支喘息(2.成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育)〕。「非アトピー型ぜんそく」は気道の炎症に体質やストレスなど様々な要因が関係して発症するため、まさか自分がぜんそくとは思わず、受診が遅れるケースが多くみられます。
成人になってからのぜんそくは40~60代が60%以上
ぜんそくの有病率は小児ぜんそくで約7%、成人ぜんそくでは約4%と推察されています。ぜんそく患者は年々増加傾向にあり、日本では400万~500万人に達しているそうで、この30年で約3倍に増加したとも言われています。一方で、治療法の改善によりぜんそくでの死亡率は減少傾向にあります。2000年には年間約4500人であった死亡者数は、2014年には約1550人まで減少しています。現在ではぜんそくによる死亡者の多くは65歳以上の高齢者です(全国健康保険協会「喘息(気管支喘息)」)。
小児ぜんそくの発症は患者の60~70%が2~3歳までに、80%以上は6歳までに発症するといわれています。思春期頃にはいったん症状が軽快するケースも多く、成人ぜんそくに移行するのは小児ぜんそく患者の30%ほどです。しかし、一度症状が消失(寛解)した方でも、30%弱が成人になって再発するといわれています。
一方、小児期にぜんそくがなく、成人になって初めて症状が出る成人発症ぜんそくは、成人ぜんそく全体の70~80%を占め、そのうち40~60歳代の発症が60%以上を占めます〔厚生労働省「平成22年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト」第3章 気管支喘息(2.成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育)」〕。