私立病院と地域の病院が協力するのはとても珍しい

湘南鎌倉総合病院では、発熱外来で開業医が診察してトラブルが起きた場合、その責任は「病院が請け負う」のだという。同院ER所属で、積極的にコロナ治療に参加する関根一朗医師に話を聞いた。

山上浩医師(左)と関根一朗医師
筆者撮影
山上浩医師(左)と関根一朗医師

「開業医の先生方に協力をお願いしたくても、見逃しや誤診をしてしまったときに“誰が責任をとるか”という問題で躊躇してしまう病院が多いかもしれません。当院ではこちらが責任をもつということと、開業医の先生方に診ていただくケースは、若くて合併症がない患者さんが中心。コロナが心配で受診する人を手分けして診断していこうというスタイルです」
「ですから他の病気の可能性が高かったり、複雑な疾患はこちら(救急医)に任せていただいてOKです。お互いにストレスのない関係をつくるのが連携できるポイントですね。今回、公的病院でなく、われわれのような私立の病院と地域の病院が協力するということは、とても珍しくて、貴重なつながりだと思っています」

通常の救急患者を守るための「コロナ臨時病棟」

さて、発熱外来は、コロナの疑いがあったり、不安を訴えたりする患者を判定する場所だが、同院には、入院の必要なコロナ患者を治療する「コロナ臨時病棟」もある。同院のそばに神奈川県によって建設され、180床を確保しているが、看護師の人手が足りない。そのため、ERを受診する患者数に制限はないが、入院前提の患者に対しては「1日10人まで」と神奈川県新型コロナ感染症対策本部にお願いしている。それでも、1日10人以上の入院を受け入れる日もあり、大多数の病院よりも受け入れ人数は多い。

ここでも自ら希望した10人のER医師が治療に参加している。各々がだいたい月に1週間程度、この病棟で勤務するイメージだ。前出の関根医師もその一人。

「病院だけでは運営が難しかったと思いますが、神奈川県が土地を確保し、建設するというハード面で支援してくれたので、連携できてすごくありがたい」と喜ぶ。

コロナ臨時病棟での診療報酬は県のものになるが、一方で医師や看護師の人件費も負担してもらえる。建物が「院外」にあることで、コロナの院内感染リスクも極力抑えられる。

コロナ臨時病棟
筆者撮影
コロナ臨時病棟

「通常の救急患者を守り、“断らない救急”を実践するためにも、コロナ陽性患者で入院が必要な人をここで診られるのはとても有り難い」と、山上医師も言う。

しかしエクモ(ECMO=体外式膜型人工肺)などの医療機器が必要になるような新型コロナの重症患者が発生した場合は、他院へ転送することになる。