「彼女から『コロナ、陽性だった』とメールがあって…」
ここは湘南鎌倉総合病院の救急医療を行う入り口だ。
新型コロナ疑いの「患者の受け入れ」と「治療」の最初の入り口は、各病院の救急医療が主に担っている。
2021年1月2日夜、とてもだるそうな30代男性が、目の前の椅子に腰かけた。
「今日はどうされましたか」
と、看護師の馬場健司さんが話しかける。その男性はこう答えた。
「2日前から熱があって、だるくて……。(付き合っている)彼女も具合が悪かったのですが、ついさっき彼女から『コロナ、陽性だった』とメールがありました」
馬場さんはうなずき、男性の体温や血圧、酸素量などのバイタルチェックにとりかかった。この業務を「トリアージ」という。
男性と馬場さんは対面に向き合うため、間にはアクリル板による透明の仕切りがあり、看護師はゴーグルとマスクを身につけている。
「熱が出る前に彼女さんとは、かなり一緒にいましたか?」
再び馬場さんがたずねると、「半同棲のような感じだったので……」と男性は答えてうつむく。
ほかにもいくつかの質問をした後、馬場さんは「トリアージ検証表」の「白」に丸をつけ、男性を院外に設置されたプレハブの「発熱外来」に案内した。
救急医療で3年以上の経験を積んだ看護師による「トリアージ」
トリアージでは病や怪我の「重症度」よりも、早く医療介入すべきかどうかの「緊急度」が重視される。カナダの院内トリアージ「CTAS救急患者緊急度判定支援システム」の日本版であるJTASを基準として判定し、青(超緊急)、赤(緊急)、黄(準緊急)、緑・白(低緊急)とランクづけしてカルテに色を記す。
トリアージを行うには幅広い知識と注意深さ、経験が必要とされる。実際にトリアージを担当できるのは、救急医療で3年以上の経験を積んだ看護師だ。
時間をさかのぼり、その日の午前中、看護師の狩野雄太郎さんのトリアージでは、こんな患者もいた。