「初療」という役割を担う病院が、地域に一つは必要

体制が整わず、「救急医療」が行えない病院があってもいい。それならそれで、最初に患者を受け入れる「超急性期病院を支える役割」を全うすれば、地域医療はまわっていく。湘南鎌倉総合病院がある神奈川県では、コロナ疑いを受け入れる病院、陽性と確定した患者を受け入れる病院、感染症が治癒した患者を受け入れる病院などと、各病院の役割分担がトップダウンで進められている。

しかし——。

年明けのERの様子
筆者撮影
年明けのERの様子

新年早々、「発熱している患者なのですが……」と、救急隊が申し訳なさそうに頭を下げながら同院ERに患者を運んできた。

<40代女性、症状は37度前半の発熱と呼吸苦、バイタル安定、意識清明、ぜんそくもち>

聞けば、たったこれだけで10件以上の近隣の救急指定病院に断られ、1時間以上かけて同院に患者を搬送してきたのだという。救急車は帰り道ではサイレンを鳴らさないため、往復で3時間はかかると推定される。つまり数時間、患者が住む地域の救急車1台が占拠されることになる。

だから「初療」は、患者が住む地域で行うべきで、その「役割を背負おう」と腹をくくる病院が、各地域に少なくとも一つは必要だ。

「お医者さんはいませんか」に応じる医師は34%

もちろん「初療」には常にリスクがつきまとう。

こんな調査報告がある。

医師758人に「飛行機・新幹線内で救助要請に応じる」、つまり「お医者さんはいませんか」という呼びかけに応じるかと問うと、「応じる」と回答した医師はわずか34%。しかも要請に応じた医師のうち、約25%は「今後は応じない」と回答した。「助けることができれば感謝されるが、失敗したら訴えられるから」というのがその理由だ。

前述した女性患者がいい例なのだが、発熱と呼吸苦と聞けば、「新型コロナ」や「持病のぜんそく」が疑われやすい。しかし、「心不全」の可能性もあるのだと、担当した久志本愛莉医師が教えてくれた。「ぜんそく」と「心不全」では治療が真逆になるという。

特にこのコロナ禍では、大半の病院は、医師は、患者を選ぶ。少しでもリスクがある患者は、自分の身を守るために受け入れられない。そして患者を乗せた救急車のたらいまわしが起きる。

「あと何人まで受け入れられるか?」「腹をくくってます」

同院ERの電話が鳴った。救急救命士が電話をとる。電話の相手は、神奈川県新型コロナ感染症対策本部であった。

「明日の朝までに新型コロナ陽性や疑いの患者を、あと何人まで受け入れられるか?」

という連絡。その問いかけに対して山上医師は「腹をくくってます」と応えた。

「ここで最初の診断と治療方針を示す。そして周囲の病院と連携すれば、『満床』はありません」

(第2回に続く。1月8日11時公開予定)

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