※本稿は、和田秀樹『女80歳の壁』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
「ちょっと太っている」くらいが長生きする
おそらくこの本の読者も、「年をとったら、お肉よりお魚よね」と思っているのではありませんか?
なぜ、そう思うのでしょう。
それは“痩せ信仰”なるものが、日本人のなかに根付いているからだと思います。ですがそれは「とんでもない間違い」と言わざるを得ません。
なぜなら、ちょっと太っている人のほうが、元気で長生きだからです。
「痩せている人はバカだ」と言うつもりはありませんが、太めのほうが頭は働くと言えます。ブドウ糖が「枯渇した脳」よりも「豊富な脳」の働きがいいことは明らかです。朝ごはんを食べていないと子どもの成績が下がることは、よく知られた話です。実際、体型的にもちょい太めの人のほうが、知的に活躍していると言えます。名指しはしませんが、各国や各界の女性リーダーを見れば「ああ確かに」と納得できると思います。
“痩せ信仰”は現代の纏足
「痩せているほど美しい」というのは、幻想であり「現代の纏足」とさえ思うほどです。纏足とは、かつて中国で行われていた風習です。「足が小さいほど美しい」という価値観を植えつけ、民衆は従いました。小さな女児の足に布を巻き、足が大きくならないようにしたわけです。足は歪な形になります。走れなくなります。ですが、これこそが偉い人たちの狙いで、ウソを教えることによって、女性が逃げるのを防いだのです。
日本の“痩せ信仰”も、これと似ていると思うのです。痩せさせることで活力を奪い、女性が社会で活躍できないようにした、と。
もちろん、それは私の穿った見方ではあるのですが、事実として、日本の少子化には歯止めがかかりません。同じく痩せ願望の韓国も同じ状況です。
私の知人に「日本一の不妊の名医」と言われる人がいます。彼を訪ねて全国から多くの女性が不妊治療にやってくるのですが、その9割は「若い頃にダイエットをしていた人」だと言います。
栄養が不十分だったため、子宮が育っていないのです。本来、成長期は健康に生きるための体を作る時期です。満足な食事をしなければ、健康な体にも、活力に満ちた心にもならないことは言うまでもありません。